メールセキュリティにおける人的要因:チームが脅威を認識できるように訓練すること

メールセキュリティにおける人的要因:チームが脅威を認識できるように訓練すること

2024年9月2日
著者: Ahona Rudra
翻訳: 岩瀨 彩江

この記事はPowerDMARCのブログ記事 The Human Factor in Email Security: Training Your Team to Recognize Threats の翻訳です。
Spelldataは、PowerDMARCの日本代理店です。
この記事は、PowerDMARCの許可を得て、翻訳しています。


「メールセキュリティ」という言葉を聞くだけで、ハリウッド映画の薄暗い部屋で怪しげなハッカーが猛烈にキーボードを叩く光景を思い浮かべるかもしれません。
しかし実際のところ、メールセキュリティにとって最大の脅威はそんなスーパーヴィランではなく、「Password123」が“まあまあ良いパスワード”だと思っている経理部のボブなのです。
ですので、会社のメールが心配で、チームがメール脅威を見分ける準備ができているか気になっているなら、ここで役立つ情報を見つけられるでしょう。

さあ、メールセキュリティにおける人的要因について、そしてチームをこの脅威を認識できるようにトレーニングすることが良い考えであるだけでなく、今まさに必要とされている理由について見ていきましょう。

まず最初に、人間はメールセキュリティに関してひどいものだということです。
はい、言ってしまいました。
ですが、あなたが怒って私を追いかける前に、その意味を説明させてください。

フィッシングメールは非常に巧妙になっており、最も技術に精通した人でさえ引っかかってしまう可能性があります。
ですが、いいですか? フィッシングは問題のごく一部にすぎません。
私たちが話しているのは、なりすまし、マルウェア、ランサムウェア、そして“全員に返信”という古典的な大惨事です。

これらは単なる技術的な問題ではなく、人間によって引き起こされるのです。
ご存じのとおり、人間は好奇心旺盛で怠惰です。
そして正直に言うと、人間は簡単に騙されます。

従業員の一人が「無料旅行」を約束するメールマーケティングキャンペーンを見た?
ITサポートから“緊急”と称してログイン資格情報を求めるメールが来た?
もちろん、なぜダメなのでしょう。
電話をして確認するより、情報をそのまま送ってしまう方が簡単だからですよね?

重要なポイント

  1. 人的エラーはメールセキュリティ脅威において、しばしば技術的な脆弱性以上に重大な要因になります。
  2. 啓発キャンペーンは、メールセキュリティを従業員の意識の最前線に保つうえで重要な役割を果たします。
  3. 定期的なトレーニングセッションは、潜在的な脅威について従業員に効果的に教えるために、魅力的で双方向的な内容にするべきです。
  4. 模擬フィッシング攻撃は、従業員の認識度を評価し、追加トレーニングが必要な人を特定するのに役立ちます。
  5. 明確な報告手順を導入することで、従業員が不審なメールを適切に扱えるようになります。

メールセキュリティにおける人的エラーを最小化するには?

では、これらすべてのエラーをどうやって修正するのでしょうか?
フィッシングに引っかかりがちなボブを、メールセキュリティの達人へとどう変身させることができるのでしょうか?
その答えは、トレーニングです。

そう、みんなが嫌がりがちなトレーニングです。
しかし、それがなければ、あなたのチームはネットワークの鍵をハッカーに手渡しているのも同然なのです。

ステップ1:啓発キャンペーン
まずは啓発キャンペーンから始めましょう。
組織内でメールセキュリティを“ホットな話題”にすることは、あなたの責任です。
注意を引くキャッチーなポスターや(皮肉にも)メールを作成して、人々の目を引きましょう。

啓発キャンペーンの目的は、常にセキュリティを全員の意識の最前線に置くことです。
人々がリスクを認識すればするほど、それらに引っかかる可能性は低くなることを常に忘れないでください。
ステップ2:定期的なトレーニングセッション
さて、次はステップ2、つまり最も重要な部分である定期的なトレーニングセッションです。
ここでいうトレーニングとは、SSL証明書について延々と話して従業員が全員上の空になるようなものではありません。

インタラクティブで、魅力的で、敢えて言うなら“楽しい”トレーニングセッションのことです。
実際の例を用い、フィッシングがどのようなものかを見せ、従業員自身に脅威を見分ける練習をさせる必要があります。
ステップ3:模擬攻撃
「習うより慣れよ」という言葉を聞いたことがありますよね?
それなら、フィッシング攻撃を模擬してみてはいかがでしょうか。

従業員に偽のフィッシングメールを送って、誰が罠にかかるか確認するのです。
これは従業員の認識度をテストするだけでなく、追加のサポートが必要な人を特定するための貴重なデータも提供してくれます。
ステップ4:明確な報告手順
さて、従業員の一人が不審なメールに気づいたとしましょう。
では、彼らが従うべきプロトコルは何でしょうか?

チームは、そのようなメールに遭遇した際に何をすべきか、正確に理解している必要があります。
この場合、明確な報告手順は必須です。
メールをIT部門に転送するにせよ、特定の報告ツールを使うにせよ、従業員一人ひとりが手順を完全に理解しているようにしましょう。
ステップ5:継続的な教育
セキュリティは“一度やったら終わり”というものではありません。
脅威は時間とともに進化し、それに伴ってトレーニングも進化させる必要があります。

常にチームに最新の詐欺手口を共有し、警戒心を保たせ、良い習慣を強化し続けてください。
月刊ニュースレターの発行、追加のトレーニングセッション、さらには定例ミーティングでのワンポイントアドバイスなどを検討してみても良いでしょう。
メールセキュリティにおけるヒューマンエラーを最小化するための対策手順を示した図

メール脅威と戦う上でのテクノロジーの役割

もちろん、すべてがあなたのチームの責任というわけではありません。
メール攻撃に対して、チームだけが責任を負うべきではありません。
テクノロジーもまた、メールセキュリティにおいて重要な役割を果たします。

スパムフィルター、アンチウイルスソフトウェア、メール検証API、そしてファイアウォールは、常にあなたの最初の防衛ラインとなります。
しかし忘れないでください。これらのツールは、それを使う人間次第で効果が大きく変わります。
ですので、すべての警告とスパムフィルターがあったとしても、ボブがその怪しいリンクをクリックしてしまえば、テクノロジーができることには限界があるのです。

メール認証
メール認証は、フィッシング脅威からメールを守るための最も信頼性の高い方法の一つです。
認証は、メールプロバイダがメッセージの送信元を検証し、それが信頼できる送信者から来ているかどうかを判断するのに役立ちます。

最も広く使用されているメール認証プロトコルの一つが DMARC で、これはDKIM と SPFという2つのメール認証技術の上に構築されています。
メールメッセージがこの2つのうちいずれかの認証に合格すれば、DMARC はそのメッセージが正当なものであるとメールプロバイダに伝えます。
多要素認証の導入
メールに追加のセキュリティ層を設ける最も信頼された方法の一つが、多要素認証(MFA)の導入です。
MFA は、ドアに二つ目の鍵を付けるようなものです。

たとえ誰かがあなたのパスワードを手に入れたとしても、アカウントにアクセスするにはもう一つの情報が必要になります。
確かに少し面倒ですが、その価値は十分にあります。
定期的なソフトウェア更新
そして次に、ソフトウェアを最新の状態に保つという問題があります。
古いソフトウェアは、ハッカーにとっての遊び場と考えることができます。
そのため、定期的な更新やアップグレードは、セキュリティギャップを塞ぎ、防御を強化するために常に役立ちます。
セキュリティ対策における最新テクノロジーが果たす役割の概念図

職場でメールセキュリティトレーニングを導入するメリット

メールセキュリティトレーニングは一見大変そうに思えるかもしれませんが、その効果は常に十分な価値があります。
トレーニングを受けたチームは、セキュリティ侵害に発展する前に問題を察知でき、組織の時間・コスト・トラブルを節約できます。

リスクの軽減
メールセキュリティトレーニングの最も明白なメリットは、リスクの軽減です。
チームがメール脅威について理解すればするほど、被害に遭う可能性は低くなります。
これはすなわち、セキュリティインシデントの減少、ダウンタイムの短縮、そして会社全体の安全な環境につながります。
チームの自信向上
メールセキュリティに関するトレーニングのもう一つの利点は、従業員の自信が高まることです。
チームが何を確認し、どう対応するべきか理解していれば、自分の能力により自信を持てるようになります。
つまり、会社のセキュリティ向上だけでなく、士気の向上にもつながるのです。
組織の評判向上
最後に、メールセキュリティが組織の評判に与える影響を考えてみましょう。
データ侵害は会社にとって大きなPR上の悪夢となり得ます。
しかし、脅威を認識し対応できるチームがいれば、組織の評判を守り、顧客からの信頼を維持する助けになります。

まとめ

結局のところ、これらのメール脅威に対する最良の防御策は、十分にトレーニングされたチームです。
従業員を“ヒューマンファイアウォール”として考えてみてください。
彼らは受信箱に届く無数のフィッシング攻撃やその他の厄介な脅威に対して防御の最前線に立っているのです。

ですから、トレーニングにしっかり投資し、コミュニケーションを密に保ちましょう。
そして覚えておいてください。ボブだってあなたを驚かせるかもしれません。
定期的なトレーニングを続ければ、彼もセキュリティのスーパースターになれるのです。