メールサーバを保護する方法:15の重要な手順
2024年7月1日
著者: Ahona Rudra
翻訳: 岩瀨 彩江
この記事はPowerDMARCのブログ記事 How to Secure Your Email Server: 15 Essential Steps の翻訳です。
Spelldataは、PowerDMARCの日本代理店です。
この記事は、PowerDMARCの許可を得て、翻訳しています。
重要なポイント
- 安全なメールサーバは、機密データの保護、事業継続性の確保、評判の管理、および法規制(例:GDPR)への遵守を維持するために極めて重要です。
- 強力なパスワードポリシーと多要素認証(2FA)の実装は、不正なアカウントアクセスに対する基本的な防御を提供します。
- SPF、DKIM、DMARCといったメール認証プロトコルは、送信者の身元を検証し、なりすましやフィッシング攻撃を防ぐために不可欠です。
- 定期的なソフトウェア更新、パッチ管理、堅牢なファイアウォールおよびIDPSの設定は、インフラの脆弱性を軽減するうえで重要です。
- セキュアメールゲートウェイ(SEG)、転送暗号化のためのMTA-STS、DNSの完全性を保つDNSSECを活用することで、さまざまなメール脅威に対して多層的な防御を提供します。
メールサーバは、ハッカーが企業に侵入するための最も一般的な入口の1つです。
たった1度の侵入でも、機密データの漏洩、評判の損失、日常業務の混乱を引き起こす可能性があります。
サイバー犯罪が急速に拡大している現在、「あなたのメールサーバが攻撃されるかどうか」ではなく、「いつ攻撃されるか」が問題となっています。
だからこそ、メールサーバをどのように保護するかを知ることが極めて重要です。
安全なメールサーバは、ハッカー、盗難、ウイルス、その他の脅威から企業データを守り、コンプライアンスと事業継続性を確保します。
本ガイドでは、メール通信を安全に保つために実践できるベストプラクティスを紹介します。
メールサーバを保護する方法
メールサーバそのものを保護することは、サイバー攻撃に対する第一の防御線です。
多くの侵入は、高度な脆弱性攻撃から始まるわけではなく、脆弱な設定、古いシステム、または不十分なセキュリティ管理から始まります。
そのため、企業の規模に関係なく、サーバの中核部分を確実に保護することが極めて重要です。
以下のベストプラクティスは、サーバレベルの保護を強化するための実践的なチェックリストを提供します。
これらは、認証、暗号化、監視、さらには人的要因といった基本要素を網羅しており、安全で信頼性の高いメール通信を実現するための堅固な基盤を構築する手助けとなります。
- 1.強力なパスワードポリシーを適用する
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脆弱または盗まれたパスワードは、メールサーバ侵入の主な原因の一つであり続けています。
従来は頻繁なパスワード変更を強制することが推奨されていましたが、現在のベストプラクティスでは、より賢明なセキュリティ対策が重視されています。
定期的なリセットを行う代わりに、一般的に使用されている、または漏洩したパスワードをブロックするためのパスワードブラックリストを使用し、侵入が疑われる場合のみリセットを要求するようにします。
また、ユーザには長いパスワードまたはパスフレーズを作成することが推奨されます。
長さは認証情報を解読しにくくする最も強力な要素の一つだからです。
さらに、大文字と小文字、数字、記号を組み合わせることで、より高い保護効果を得ることができます。 - 2.二要素認証(2FA)を使用する
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どれほど強力なパスワードであっても、フィッシング、マルウェア、またはデータ漏洩によって盗まれる可能性があります。
そのため、二要素認証(2FA)を有効にすることは、メールアカウントを保護する最も効果的な方法の一つです。
2FAでは、ユーザがアカウントにアクセスする前に、ワンタイムコードなど追加の本人確認情報を提供する必要があります。
この追加の防御層により、攻撃者がパスワードを入手したとしても、第二の要素がなければログインできません。
一般的で信頼性の高い認証アプリとしては、Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorなどがあり、これらは安全なログインのために時限コードを生成します。 - 3.転送中のデータを暗号化する
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安全なメールサーバを実現するために、以下の暗号化方式を検討してください。
- TLS(Transport Layer Security)
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サーバとクライアント間の通信中にデータを暗号化するためにTLSプロトコルを実装します。
これにより、悪意のある第三者による盗聴を防ぎ、メール通信の機密性と完全性を確保します。 - MTA-STS(Mail Transfer Agent Strict Transport Security)
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MTA-STSを構成することで、メールサービスプロバイダが自社サーバから送信されるメールに対してTLS暗号化をサポートしていることを宣言できるようになります。
これにより、サーバ間通信の安全性が確保されます。 - エンドツーエンド暗号化(End-to-End Encryption)
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暗号化をエンドツーエンドレベルまで拡張し、意図した受信者のみが内容を復号できるようにします。
この高度なセキュリティ対策は、特に機密情報や重要データをメールで送信する場合に、追加の防御層を提供します。
- 4.SPF、DKIM、DMARCを有効にする
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堅牢なメール認証プロトコルを実装することは、メールのなりすましやフィッシング攻撃を防止するために不可欠です。
これらの攻撃はセキュリティ侵害の一般的な経路となるため、対策が重要です。- SPF(Sender Policy Framework)
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このプロトコルは、ドメイン所有者が自分のドメイン名を使用してメールを送信する権限を持つメールサーバを指定できるようにします。
DNSのTXTレコードを使用して許可されたホストを定義し、受信サーバはこのレコードを確認して送信者の正当性を検証します。 - DKIM(DomainKeys Identified Mail)
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DKIMは公開鍵暗号方式を用いて送信メールにデジタル署名を追加します。
この署名により、メールが認可された送信元から送られたものであり、転送中にメッセージ内容が改竄されていないことを確認できます。 - DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting & Conformance)
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DMARCはSPFおよびDKIMを基盤として構築されています。
「From」ヘッダーに記載されたドメインと、SPFおよび/またはDKIMで検証されたドメインとの整合性を要求します。
また、認証に失敗したメールに対して「拒否」「隔離」「許可なし」などのポリシーを指定でき、メール認証の結果に関するレポートを受け取ることも可能にします。
これらの対策は相互に作用し、能動的で強靭なメールセキュリティ体制を形成し、最終的には安全なメールサーバの実現につながります。 - 5.定期的なソフトウェア更新とパッチ管理を実施する
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古いソフトウェアや未適用の脆弱性は、攻撃者が侵入する一般的な入口となります。
効果的なパッチ管理戦略を導入することで、メールサーバを既知の脅威から常に保護することができます。
主な実践項目は以下のとおりです。- 可能な限り自動化する
- 重要な更新を迅速に検出し、適用できるように自動化ツールを活用します。
- 導入前にテストする
- 運用環境に影響を与えないよう、ステージング環境でパッチを検証してから適用します。
- 最新情報を把握する
- ベンダーのセキュリティ情報を購読し、新たな脆弱性に迅速に対応できるようにします。
- 6.ファイアウォールを構成する
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適切に構成されたファイアウォールは、悪意のあるトラフィックを遮断し、不正アクセスを防止することで、内部ネットワークと外部の脅威との間に防御壁を築きます。
そのため、ネットワーク環境の変化や新たなセキュリティ脅威に対応するために、ファイアウォールのルールを定期的に見直し、更新することが重要です。
汎用的なルールではなく、以下の原則に基づいて設定を行いましょう。- 「デフォルト拒否」ルールを実装する
- すべてのトラフィックをデフォルトで遮断し、明示的に必要な通信のみを許可します。
- 管理アクセスを制限する
- 管理ポートへのアクセスは、信頼できるIPアドレスのみに限定します。
- 送信トラフィックをフィルタリングする
- データの持ち出し(データ漏洩)を防ぐため、ネットワークから外部へ出るトラフィックを制御します。
- 7.セキュアメールゲートウェイ(SEG)を導入する
- セキュアメールゲートウェイ(SEG)は、危険なコンテンツが受信トレイに届く前にフィルタリングすることで、追加の防御層を提供します。 スパム対策にとどまらず、SEGは悪意のあるリンク、感染した添付ファイル、フィッシングの試み、その他システムを危険にさらす有害なコンテンツを遮断します。
- 8.侵入検知および防御システム(IDPS)を導入する
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侵入検知・防御システム(IDPS)は、ネットワークトラフィックを監視し、不審な挙動を検出して対処します。
これらは次の2つの方法で機能します。- 脅威の検知(IDS)
- 異常なトラフィックパターン、ポリシー違反、既知の攻撃シグネチャを特定します。
- 脅威の防御(IPS)
- 悪意のある活動が重要なシステムに到達する前に、自動的にブロックまたは封じ込めます。
- 9.DNSBLおよびRBLチェックを適用する
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サーバが受信メールを受け入れる前に、送信元のIPアドレスを公開されているDNSベースのブラックホールリスト(DNSBL)またはリアルタイムブラックホールリスト(RBL)と照合することができます。
これにより、既知の悪意ある送信元からのスパムや不正メールをブロックすることが可能になります。
適切に管理された信頼性の高いRBLを使用することが重要です。
管理が不十分なリストを使用すると誤検出(誤判定)が発生する可能性がありますが、最新のリストを利用することで精度が向上し、迷惑メールを効果的に減らすことができます。 - 10.SURBLを使用してメッセージ内容を検証する
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SURBL(Spam URI Real-time Block List)を有効にして、メッセージ内容を検証します。
SURBLは、メール本文内のURLを既知のスパムサイトや悪意のあるWebサイトのリストと照合します。
もし一致が見つかった場合、そのメールをブロックすることができます。
この手法は、IPベースのリストとは異なり、メールの内容自体を分析するため、別の防御層として機能します。
その結果、マルウェアやフィッシングリンクからの保護を強化することができます。
ただし、すべてのメールサーバがSURBLをサポートしているわけではない点に注意が必要です。 - 11.ドメインネームシステムセキュリティ拡張(DNSSEC)を実装する
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DNSSECは、DNSシステムそのものにセキュリティ層を追加し、メールサーバが受け取るDNS情報が真正であり、改竄されていないことを保証します。
これにより、攻撃者がDNS情報を改変してユーザを悪意のあるサイトへ誘導するDNSスプーフィング攻撃を防止できます。
DNSSECの導入は、TLS暗号化やSPF/DMARCレコードなど、他のセキュリティ対策を確実に機能させるうえでも極めて重要です。
これらのメールサーバインフラ要素に対応することで、潜在的な脅威の幅広い範囲に対抗できる強固な防御メカニズムを構築し、メール通信の機密性、完全性、および可用性を確保することができます。 - 12.サーバログを定期的に監視する
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サーバログは、攻撃の初期警戒兆候を見つけるための最も価値のあるツールの一つです。
ログを分析することで、事態が深刻化する前に不審な活動を検出できます。
侵害の兆候となり得る、ログイン失敗の増加、送信スパムの急増、または異常なトラフィックパターンを追跡します。
そのため、次のことを行うべきです。- 自動化されたログ分析ツールを使用して、異常をより迅速に特定します。
必要に応じてフォレンジック調査ができるよう、ログを安全に保管します。 - ログ監視で得た知見を、将来のセキュリティポリシーの強化に適用します。
- 自動化されたログ分析ツールを使用して、異常をより迅速に特定します。
- 13.定期的にバックアップを実施する
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バックアップは、ランサムウェア、誤削除、または重大なシステム障害に対する安全網です。
バックアップがなければ、復旧が不可能になる場合もあります。
事前対策として、次のことを行う必要があります。
- データの重要度に応じて、毎日または毎週バックアップを実行します。
- 迅速な復旧のためのオンサイト保存と、災害対策のためのオフサイト保存の両方を実施します。
- すべてのバックアップを暗号化し、不正アクセスから保護します。
- 必要なときに確実にデータを復元できるよう、定期的にバックアップのリストアテストを行います。
- 14.インシデント対応計画を策定する
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インシデント対応計画は、セキュリティ侵害が発生した際に、組織が迅速かつ効果的に対応できるようにするためのものです。
この計画では、各チームメンバーが緊急時に自分の役割と責任を明確に理解できるよう、職務分担を明示する必要があります。
また、内部での連携を円滑にし、外部の関係者にも適切に情報を共有できるよう、コミュニケーション手順を文書化することも同様に重要です。
計画を効果的に維持するためには、定期的に訓練を実施し、新たな脅威の出現に応じて内容を更新する必要があります。
さらに、企業はセキュリティインシデントに関する法的およびコンプライアンス上の義務、特に報告が義務付けられている要件についても考慮する必要があります。 - 15.従業員にセキュリティ対策を教育する
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人為的要因は、メールセキュリティにおける最も一般的な脆弱性の一つです。
従業員は、フィッシングの試みを見抜き、不審なメッセージを適切に処理し、脅威を迅速に報告できるよう、継続的なトレーニングを受ける必要があります。
フィッシング対策の意識づけは、入社時のオンボーディングから始め、定期的な再教育セッションによって強化することが重要です。
トレーニングは技術的な指導にとどまらず、すべての従業員が企業データを守る責任を自覚する「セキュリティ意識の文化」を育てることを目的とすべきです。
セキュリティを日常的な習慣として定着させることで、人為的ミスによる重大なサイバーセキュリティ侵害の発生を防ぐことができます。
メールサーバに対する一般的な脅威
メールサーバは、機密性の高い業務データを扱い、従業員・取引先・顧客との直接的な通信経路を提供するため、サイバー犯罪者にとって最も頻繁に狙われる標的の一つです。
攻撃の多くは、ユーザをだまして認証情報を漏らさせたり、悪意のあるリンクをクリックさせたりするフィッシングメールから始まります。
これにより、マルウェアやランサムウェアがシステムに侵入し、攻撃者はファイルを暗号化して身代金を要求したり、密かに重要情報を収集したりする可能性があります。
フィッシングやマルウェア以外にも、ブルートフォース攻撃やクレデンシャルスタッフィング攻撃が依然として一般的です。
これらは、攻撃者がパスワードを推測したり、盗まれた認証情報を再利用したりしてアカウント侵入を試みるものです。
さらに、攻撃者が経営幹部や信頼できる関係者を装って組織を詐欺にかける「ビジネスメール詐欺(BEC)」も急増しています。
すべてのリスクが外部から来るわけではありません。
内部脅威や、不注意・未教育の従業員も、機密データの誤取扱いやセキュリティポリシーの軽視によって、意図せずシステムを危険にさらすことがあります。
安全なメールサーバの仕組み
安全なメールサーバは、企業のための信頼できる郵便システムのように機能します。
送信者を検証し、メッセージ内容をチェックし、封筒を施錠し、意図された受信者だけがそれを開けられるようにします。
各防御層は、攻撃者を異なる段階で食い止め、通信の安全を維持するよう設計されています。
このプロセスは、SPF、DKIM、DMARCといった認証プロトコルから始まります。
これらは、メールが本当に自社ドメインから送信されていることを確認し、なりすましによる送信ではないことを検証します。
次に、サーバはセキュアメールゲートウェイ(SEG)やRBLチェックなどのフィルタリングシステムを活用し、スパム、フィッシング、悪意のあるリンク、不審な添付ファイルを受信トレイに届く前にブロックします。
さらに、暗号化によって、メッセージが送信中に傍受されたとしても、正しい鍵を持つ者以外には内容を解読できないようにします。
わかりやすく言えば、暗号化とは「正しい受信者だけが鍵を持つ封筒に手紙を封じる」ようなものです。
その他の防御策として、ファイアウォール、侵入検知システム、ログ監視などがあり、不審な活動を監視してリアルタイムで侵入を防ぐことで、保護をさらに強化します。
これらの対策を組み合わせることで、企業のデータをハッカー、ウイルス、内部の人的ミスから守り、同時にコンプライアンス、事業継続性、そして顧客からの信頼を確保することができます。
メールサーバセキュリティの設計図
メールサーバの保護は、企業を守るために最も効果的な対策の一つです。
強力な認証、暗号化、監視、そして従業員のセキュリティ意識を組み合わせることで、脅威による実被害を防ぐ多層的な防御を構築できます。
これらの対策は、機密データを保護するだけでなく、コンプライアンスの遵守、事業継続性の確保、そして顧客からの信頼にもつながります。
防御をさらに強化する準備はできていますか?
PowerDMARCのソリューションを活用すれば、企業のニーズに合わせた安全で強靭なメールインフラを構築することができます。
よくある質問
- ハッカーはどのようにしてメールアカウントに侵入するのですか?
- ハッカーは、脆弱または使い回されたパスワード、フィッシング攻撃、マルウェア、または盗まれたログイン情報を使ったクレデンシャルスタッフィングなどの手法を利用して侵入します。
- ハッキングされないメールはありますか?
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完全にハッキング不可能なメールは存在しません。
しかし、暗号化、強力な認証、多層的なセキュリティ対策を備えた安全なメールサービスを利用することで、リスクを大幅に減らすことができます。 - 安全なメールと通常のメールの違いは何ですか?
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安全なメールは、暗号化、認証、フィルタリングによって不正アクセスを防止します。
一方、通常のメールは盗聴、なりすまし、改竄などに対して脆弱です。