ユーザーとクラウドサービスの間に配置され、アクセス監視やセキュリティポリシーの適用、データ流出防止を一元管理するCASBの仕組みのイメージ

CASBとは?Cloud Access Security Broker(CASB)をわかりやすく解説


著者: Maitham Al Lawati
翻訳: 古川 綾乃

この記事はPowerDMARCのブログ記事 What Is CASB? Cloud Access Security Broker Explained の翻訳です。
Spelldataは、PowerDMARCの日本代理店です。
この記事は、PowerDMARCの許可を得て、翻訳しています。


主なポイント

  1. CASBは主に2つの方法(APIベースまたはプロキシベース)で導入でき、それぞれ組織のインフラやセキュリティ要件に応じた異なる利点を提供します。
  2. CASBに搭載されたData Loss Prevention(DLP)機能は、機密情報がクラウド経由で組織外へ流出することを防止します。

リスクの低減、コスト効率の向上、一元管理の実現、およびコンプライアンス強化は、CASBがもたらす主なメリットです。
組織がクラウドファースト戦略を採用するにつれて、セキュリティ環境はますます複雑になっています。
Cloud Access Security Broker(CASB)ソリューションは、機密データを保護しながらクラウド環境の可視化と統制を実現したい企業にとって、重要なセキュリティ基盤となっています。

CASBは、ユーザとクラウドアプリケーションの間に配置されるセキュリティ制御の中継点として機能し、すべてのクラウド利用を監視して組織のセキュリティポリシーを適用します。
Microsoft 365、Google Workspace、Salesforceをはじめとするさまざまなクラウドアプリケーションを利用している場合でも、CASBはデータ侵害の防止やコンプライアンス維持に必要な監視機能と利用状況の把握機能を提供します。
現在、クラウドアプリケーションは業務のほぼあらゆる領域で利用されているため、CASBを理解することは、ITセキュリティ担当者、経営層、そして組織データの保護に携わるすべての担当者にとって重要となっています。

CASBとは何か?

Cloud Access Security Broker(CASB)とは、クラウドベースのリソースへアクセスする際に、組織のセキュリティポリシーを適用するセキュリティソリューションです。
CASBは、ユーザとクラウドサービスプロバイダの間に配置されるセキュリティゲートウェイとして機能し、すべてのやり取りを監視しながら、企業のセキュリティ基準への準拠を支援します。
CASBソリューションは、クラウドプロバイダが提供するセキュリティ機能と、企業がデータ保護や規制対応のために必要とする管理機能との両者の不足を補完します。

クラウドプロバイダが自社インフラの保護を担う一方で、CASBはクラウド環境内のデータやユーザアクセスの保護を主な役割としています。
この技術は、アプリケーションやデータが従来のネットワーク境界の外に存在するようになった環境においても、可視性と制御を維持するという課題を解決します。
CASBは、すべてのクラウドサービスに共通するセキュリティレイヤを提供することで、一元的な管理と制御を実現します。

CASBの仕組み

CASBは主に2つの導入モデルで提供され、それぞれが組織のニーズやインフラ環境に応じた異なるメリットをもたらします。

APIベースのCASB
APIベースのCASBは、Application Programming Interface(API)を通じてクラウドアプリケーションと直接連携し、ユーザの利用状況、データの使用状況、セキュリティ設定などに関する詳細な利用状況を把握できます。
アプリケーションレベルで統合されるため、ネットワーク性能への影響を抑えながら幅広い監視を実現できます。
一方で、リスクの高い操作をリアルタイムでブロックする機能には制限がある場合があります。
プロキシベースのCASB
プロキシベースのCASBは、ネットワークトラフィック上に配置され、ユーザとクラウドサービス間の通信を中継しながら監視します。
このモデルではリアルタイムでポリシーを適用できるため、不審な操作をその場で検知・遮断できます。
その反面、通信経路上に介在するため、一定のネットワーク遅延が発生する可能性があります。

CASBの主要機能

最新のCASBソリューションは、クラウド環境を保護し、組織のセキュリティポリシーへの準拠を支援する4つの中核機能を提供します。

可視性(Visibility)

CASBは、組織全体におけるクラウドアプリケーション利用状況について包括的な可視性を提供します。
これには、IT部門の承認や把握なしに従業員が利用しているクラウドサービス、いわゆるシャドーITの発見も含まれます。

可視化機能により、従業員がどのクラウドサービスを利用しているのか、どのようにアクセスしているのか、またどのようなデータをアップロード・共有しているのかを把握できます。
この情報は、組織が想定しているクラウドセキュリティ態勢と実際の運用状況とのギャップを把握するうえで非常に重要です。

コンプライアンス(Compliance)

規制要件への対応はクラウド導入における重要な課題であり、CASBはGDPR、HIPAA、SOXをはじめとする各種規制や業界基準への準拠を支援する上で重要な役割を果たします。
CASBは機密データを自動的に識別し、ポリシーに基づいて分類したうえで、すべてのクラウドサービスにおいて適切に管理されるよう支援します。

医療や金融など厳格な規制が求められる業界では、CASBはコンプライアンス要件に基づくポリシーをリアルタイムで適用し、違反が発生する前に防止することができます。
例えば、未承認のクラウドサービスへの機密データのアップロードをブロックしたり、適切な暗号化が適用されるよう管理したりすることが可能です。
さらに、詳細なレポートや監査証跡を提供することで、監査や調査時における規制遵守の証明を容易にします。

データセキュリティ(Data Security)

CASBに搭載されたData Loss Prevention(DLP)機能は、機密情報がクラウド経由で組織外へ流出することを防止します。
例えば、クレジットカード番号、社会保障番号、機密文書、その他の重要データのアップロードを検知し、必要に応じてブロックできます。
また、機密データがクラウドサービスへ送信される前に暗号化を適用できるため、万が一セキュリティ侵害が発生した場合でも情報を保護できます。

さらに、ユーザの役割、デバイスのセキュリティ状態、接続元の地域や位置情報などに基づいてアクセス制御を実施することも可能です。
高度なCASBソリューションでは、機械学習を活用して異常なデータアクセスパターンを検出し、内部不正やアカウント侵害の兆候を早期に発見します。

脅威対策(Threat Protection)

クラウド環境は、マルウェア、アカウント乗っ取り、悪意のある内部関係者による不正行為など、さまざまな脅威にさらされています。
CASBソリューションは、ユーザ行動を継続的に分析し、セキュリティインシデントにつながる可能性のある異常な挙動を検知します。

高度な脅威対策機能には、物理的にあり得ない移動(Impossible Travel)、異常なダウンロード量、通常の業務時間外における機密データへのアクセスなどを検出する機能が含まれます。
さらに、脅威インテリジェンスとの連携により、既知の攻撃者、不正なIPアドレス、漏えいした認証情報などを特定し、被害が発生する前に検知・遮断することが可能です。

CASBのメリット

CASBソリューションを導入することで、組織は全体的なセキュリティ体制と運用効率を大きく向上させることができます。
クラウドセキュリティを一元的に管理することで、運用の複雑さを抑えながら、すべてのクラウドサービスにわたって保護を強化できます。

リスクの低減(Risk Reduction)
CASBは、クラウド利用状況に関する包括的な可視性を提供し、ポリシーを自動的に適用することでセキュリティを強化します。
これにより、従業員がセキュリティルールを適切に遵守しているかを手作業で確認する必要が減り、監視業務の負担を軽減できます。
継続的な監視により、不正なデータ共有、シャドーIT、安全性の低いアプリケーションの利用といった潜在的なリスクを、セキュリティインシデントに発展する前に特定し、制御できます。
コスト削減効果(Cost Efficiency)
クラウドアプリケーションごとに個別のセキュリティツールを導入・維持する代わりに、CASBを利用することで、保護機能を単一の統合プラットフォームに集約できます。
これにより、ソフトウェアライセンス費用を抑え、重複するソリューションの管理負担を軽減し、ITリソースをより効果的に活用できるようになります。
長期的には、セキュリティ管理の効率化によって、管理業務全体の負荷軽減にもつながります。
セキュリティ管理の一元化(Centralized Security Management)
数百、場合によっては数千に及ぶクラウドアプリケーションのセキュリティを個別に管理することは、ITチームにとって大きな負担となります。
CASBは、一貫したポリシーを横断的に適用できる単一の管理インターフェースを提供することで、この課題を解決します。
管理者は1つのダッシュボードからクラウド利用状況を監視し、アクセスルールを適用し、脅威に対応できます。
このような一元管理により、管理時間を削減できるだけでなく、ポリシー適用のばらつきによって管理対象外のアプリケーションが生じるリスクも低減できます。
コンプライアンスの向上(Improved Compliance)
ポリシー適用を自動化することで、機密データを業界標準や地域ごとの規制要件に沿って適切に管理しやすくなります。
また、リアルタイム監視により、コンプライアンス違反が発生する前にリスクを検知・防止できます。
詳細な監査ログやレポート機能により、監査や検査の際にコンプライアンス状況を証明しやすくなり、規制違反に伴う財務的リスクや評判リスクの低減にもつながります。

CASBソリューションの選び方

適切なCASBソリューションを選定するには、組織固有の要件、既存のインフラ環境、コンプライアンス要件を慎重に検討する必要があります。
評価時には、以下の要素が重要になります。

スケーラビリティ(Scalability)
CASBソリューションが現在のクラウド利用状況に対応できるだけでなく、将来的なユーザ数やアプリケーション数の増加にも対応できるかを確認する必要があります。
統合機能(Integration Capabilities)
既存のセキュリティツール、IDプロバイダ、クラウドサービスと円滑に連携できるソリューションを選ぶことが重要です。
主要なアプリケーション向けに事前構築済みのコネクタが用意されていれば、導入にかかる時間を大幅に短縮できます。
コンプライアンス対応範囲(Compliance Coverage)
自社の業界や事業展開地域に関連する規制要件をサポートしているかを確認してください。
使いやすさ(Ease of Use)
プラットフォームの導入や運用管理がどれほど容易かを評価することも重要です。 高度な専門知識を必要とする複雑すぎるツールは、導入の妨げとなり、運用効率を低下させる可能性があります。
性能への影響(Performance Impact)
特にプロキシベースのCASBを導入する場合は、アプリケーション性能やユーザ体験に与える影響を事前に検証する必要があります。
ピーク時の利用でも遅延が発生しないかを確認しておくことが重要です。

クラウドセキュリティにおけるCASBの将来

組織におけるクラウドサービス利用の拡大と、セキュリティ脅威の高度化に伴い、CASB市場は急速に進化しています。
いくつかの重要なトレンドが、クラウドセキュリティの次の段階と、その中でCASBが果たす役割を形作っています。
特に重要な進展の1つが、AIと機械学習の活用拡大です。

これらの技術により、CASBプラットフォームは静的なルールベースの仕組みから、より適応的なセキュリティモデルへと移行しつつあります。
膨大な活動データを分析することで、CASBは微細な異常を検出し、自動的に対応できるようになります。

これにより、従来は見逃されていた脅威の発見が可能になります。
もう1つの重要な方向性は、ゼロトラストアーキテクチャとの連携強化です。 CASBは現在、ゼロトラストを実現するうえで重要な構成要素と見なされており、分散化が進む現代の環境において、ユーザ、デバイス、アクセス権限を継続的に検証する役割を担います。

また、ベンダはクラウドファーストの組織に特化した、クラウドネイティブなセキュリティモデルの開発を進めています。
従来型のセキュリティアプローチをクラウド向けに転用するのではなく、クラウド環境に求められるスケーラビリティ、柔軟性、スピードに対応するために、最初からクラウドを前提として設計されたソリューションが増えています。

SaaSアプリケーションの拡大とリモートワークの定着により、ユーザがどこからクラウドサービスにアクセスしても、一貫したセキュリティ管理が求められています。
そのため、CASBの導入は今後も拡大していくと考えられます。

まとめ

組織がクラウド導入のメリットとセキュリティ要件のバランスを取る中で、CASBは現代のサイバーセキュリティ戦略において重要な要素となっています。
CASBソリューションは、すべてのクラウドサービスに対して可視性、コンプライアンス、データセキュリティ、脅威対策を提供することで、複雑化するクラウド環境における管理と制御を支援します。
CASBはクラウドアプリケーションに対する重要な監視・保護機能を提供しますが、組織はドメインセキュリティやメールセキュリティも併せて強化し、その他の重要なセキュリティギャップにも対応する必要があります。

PowerDMARCのサービスは、フィッシング、なりすまし、ドメイン悪用に対する高度な保護を提供し、クラウド活用を前提とする企業により包括的な防御をもたらします。
これらのソリューションが自社のセキュリティ戦略にどのように適合するかを確認するには、PowerDMARCのトライアルをご予約ください。

よくある質問

CASBとVPNは同じものですか?
いいえ、同じものではありません。
VPNは主に安全なネットワーク接続を確立することに重点を置いています。
一方、CASBはクラウドアプリケーションと、その内部で扱われるデータを保護するためのソリューションです。
CASBはアプリケーションレベルでポリシーを適用するため、VPNだけでは実現できない保護機能を提供できます。
すべてのクラウドプロバイダはCASBをサポートしていますか?
主要なクラウドプロバイダの多くは、APIを通じたCASB連携をサポートしていますが、対応範囲はサービスによって異なります。
Microsoft 365、Google Workspace、Salesforceなどの主要プラットフォームでは、広範なCASB連携が提供されています。
中小企業でもCASBを利用できますか?
はい、利用できます。
多くのCASBベンダは、中小企業向けに最適化されたソリューションを提供しています。
クラウドベースのCASBサービスを利用すれば、大規模なインフラ投資を行わなくても、エンタープライズレベルのセキュリティ機能を導入できます。