ブロックチェーンはメールのセキュリティを改善できるか?
2024年8月2日
著者: Ahona Rudra
翻訳: 岩瀨 彩江
この記事はPowerDMARCのブログ記事 Can Blockchain Help Improve Email Security? の翻訳です。
Spelldataは、PowerDMARCの日本代理店です。
この記事は、PowerDMARCの許可を得て、翻訳しています。
近年、ブロックチェーン技術はセキュリティ上の懸念に対処するための有力な解決策として浮上しています。
もともとビットコインのような暗号通貨の基盤技術として考案されたブロックチェーンは、分散型で改竄不可能な台帳であり、コンピュータネットワーク全体で取引を記録します。
その透明性、改竄不可能性、暗号によるセキュリティといった特有の性質により、金融取引を超えた分野、特にメールセキュリティ分野への応用も検討されています。
まず、いくつかの統計から見てみましょう。
- 1日に3473億通のメールが送信されています。
- 平均的な人は1日に121通のメールを受信しています。
- 平均的な人は1.7~1.9個のメールアカウントを持っています。
- 1日に162通のスパムメールが送信されており、これは送信メール全体の49%を占めます。
- 毎年10億件のメールアドレスが流出しています。
この統計がどれほど悪化しているか分かりましたか?
スパムメールやメールアドレスの流出件数は驚くべき数です。
果たしてブロックチェーンはこの問題の助けになるのでしょうか?
もし暗号通貨とそれを支えるブロックチェーン技術の進化を知らないとしたら、まるで岩の下で眠っていたようなものです。
ビットコインの現在価格を見てみてください ― 69,926.57ドルです。
そして、BinanceのWebサイトに掲載されている情報によると、2030年のビットコイン価格予測はさらに高く、147,505ドルから305,028ドルの間とされています。
以下では、ブロックチェーンがメールセキュリティの問題にどのように役立つ可能性があるかを探っていきます。
重要なポイント
- ブロックチェーン技術は、中央集権的なデータ侵害を防ぐことで、メールセキュリティを大幅に強化できる可能性がある分散型アプローチを提供します。
- 透明性と改竄不可能性といったブロックチェーンの本質的な特性により、メールの真正性を検証するための有望な技術候補となっています。
- ブロックチェーンをメールシステムと統合することで、メッセージ検証を強化し、フィッシング攻撃の効果を低下させることが可能になるかもしれません。
- 一方で、スケーラビリティや導入コストといった課題は、メールセキュリティ分野でのブロックチェーンの広範な採用を妨げる大きな障壁として残っています。
- ProtonMailやMailchainといった実際のブロックチェーン応用事例は、安全で暗号化された通信ソリューションを提供できる可能性を示しています。
ブロックチェーンの理解
ブロックチェーンとは、ノード検証システムを用いて複数のコンピュータ上で取引を記録する分散型デジタル台帳であり、誰も記録を改竄することができない仕組みです。
記録を改変するためには、ノードシステムを通じてネットワーク全体の合意を得る必要があります。
暗号通貨を支え、利益を生み出す技術としてだけでなく、ブロックチェーンの真の強みはその透明性と改竄不可能性にあり、これらの特性はデータの完全性やメールのセキュリティ向上にも役立ちます。
この技術は、透明性、改竄不可能性、そして改竄耐性という本質的な特性によって、高いレベルのセキュリティを提供します ― これは否定できません。
これらの特徴により、ブロックチェーンはメール通信を保護するための魅力的な選択肢となっています。
ブロックチェーンの分散型構造は、ネットワーク全体を単一の主体が支配することを防ぎ、従来のシステムでよく見られる中央集権的なデータ侵害のリスクを大幅に減らすことができます。
また、ブロックチェーン上の各取引は暗号化され、前の取引とリンクしており、攻撃者にとってさらなるセキュリティ層と複雑さを加えています。
もしメールサービス提供者がブロックチェーンの活用を始めれば、メールシステムはデータの完全性とセキュリティの新たな基準を達成できるでしょう。
現在のメールの脆弱性の状況
メールの脆弱性の現状は、冒頭で挙げた統計からも明らかです。
これほど多くのスパムメールがユーザに届いているというのは驚くべきことですし、それ以外にも直面しなければならない問題が数多く存在します。
多くの企業が PowerDMARC ― DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting, and Conformance:ドメインベースのメッセージ認証・報告・適合) ― を導入している理由の一つは、制御不能な詐欺メールやフィッシングの蔓延にあります。
フィッシング件数が増加するにつれて、メール認証プロトコルの必要性も高まり、ユーザはメールの真正性を確認し、悪意ある送信元を早期に特定できるようになっています。
メールシステムが本質的に脆弱であることは否定できません。
フィッシングに加え、スピアフィッシング、中間者攻撃(Man-in-the-Middle攻撃)、マルウェアの拡散など、さまざまなセキュリティ脅威が存在します。
従来の基本的なセキュリティ対策は必要ではあるものの、高度化するサイバー脅威に十分対応できていないことは明らかです。
そして、その脅威は確実により巧妙化しています。
ブロックチェーン技術は、これらの脆弱性に対処することで、セキュリティ基盤に有望な強化をもたらす可能性があります。
ブロックチェーンが提供する安全で改竄不可能な記録とメッセージの真正性検証機能により、送信者情報の改竄に依存するフィッシング攻撃の効果を低下させることができるかもしれません。
通信がブロックチェーン上で直接行われる場合、攻撃者がフィッシングキャンペーンを成功させることははるかに困難になるでしょう。
このようなブロックチェーンの応用は、これまでのメールには欠けていた検証の仕組みを導入することで、メールセキュリティを根本的に変革する可能性があります。
ブロックチェーンでメールセキュリティを強化する方法
ブロックチェーン開発の革新により、この技術をメールシステムに応用し、セキュリティを強化するためのさまざまな方法が開かれました。
- 認証と検証
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ブロックチェーンは、メール送信者および内容の真正性を検証することができます。
検証済みメールのハッシュキーをブロックチェーン上に保存することで、メールが元の状態から改竄されていないかを確認できるようになります。
この方法によって、通信の完全性が維持されることが保証されます。 - 分散型ストレージ
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ブロックチェーンを利用してメールの保存を分散化することで、中央集権的なデータ侵害のリスクを軽減できます。
データは単一の場所に保存されるのではなく、ノードのネットワーク全体に分散して保存されるため、侵害されにくくなります。 - エンドツーエンド暗号化
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これはブロックチェーン固有のものではありませんが、この技術をブロックチェーンプラットフォーム上のエンドツーエンド暗号化プロトコルと統合することで、通信を傍受や改竄から保護することができます。
企業はブロックチェーンを使用して暗号鍵を安全に管理・検証し、意図された受信者のみがメッセージを復号し、閲覧できるようにすることが可能です。
潜在的な課題と制限
ブロックチェーンをメールセキュリティに統合することには利点がありますが、その実装を妨げる可能性のあるいくつかの課題も存在します。
- スケーラビリティ
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ブロックチェーン技術は一般的にスケーラビリティの問題に直面します。
これは、世界中で毎日膨大な量のメールが送信されている現状を考えると、大きな課題となる可能性があります。 - 複雑さとコスト
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ブロックチェーン技術の導入は複雑であり、コストも高くつく場合があります。
既存のメールインフラに大幅な変更を加える必要があり、その結果、運用コストの増加を招く可能性もあります。 - 導入の障壁
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ブロックチェーンベースのメールセキュリティを広く普及させるには、企業、メールサービスプロバイダ、そしてユーザを含む多様な関係者の合意が必要です。
このため、実装の進展が遅れる要因となる可能性があります。
実際の応用例と事例研究
いくつかのプロジェクトやスタートアップ企業が、メールセキュリティのためにブロックチェーンを活用しています。
たとえば、ProtonMailのような企業は、すでに暗号化されたメールサービスにおいて、さらなるセキュリティ層を追加するためにブロックチェーンを利用しています。
もう一つの例として、Mailchain があります。
これは Web3 通信プロトコルであり、ブロックチェーンを活用して、ブロックチェーンプラットフォーム上で分散型かつ暗号化されたメール通信を直接実現しています。
このアプローチにより、メールは安全で、追跡可能で、改竄不可能であることが保証されます。
また、EtherMail のような分散型アプリケーション(DApps)の開発も進んでおり、従来のメールプロトコルやサーバに依存しない、暗号化された匿名のメールサービスを提供しています。
結論
ブロックチェーン技術は、メールセキュリティを革新する可能性を秘めていますが、その成功には慎重な計画、協調、そして継続的な技術革新が必要です。
技術のさらなる進歩に伴い、ブロックチェーンの強みを既存のメールセキュリティ対策と組み合わせることで、将来的には組織の通信チャネルをより効果的に保護し、機密情報を安全に守ることができるようになるかもしれません。
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