不正防止にリアルタイム検知だけでは不十分な理由
著者: Ahona Rudra
翻訳: 東條 百々朱
この記事はPowerDMARCのブログ記事 Fraud Prevention and Detection: Why “Real-Time” Is Only Half the Story の翻訳です。
Spelldataは、PowerDMARCの日本代理店です。
この記事は、PowerDMARCの許可を得て、翻訳しています。
主なポイント
- リアルタイム検知は不可欠ですが、それだけでは十分ではありません。
リアルタイム検知は、進行中の攻撃を阻止するうえで役立ちます。
しかし、コンテキストや過去のデータがなければ、巧妙な不正パターンを見逃す可能性があります。 - 予測分析は、リアルタイム検知だけでは補えない部分をカバーします。
行動傾向や過去のデータを分析することで、不正が発生する前に兆候を捉えやすくなります。 - 複数のシステムから得られる情報を統合して活用することで、防御をさらに強化できます。
システム間で継続的にデータを共有し、学習を重ねることで、検知精度とレジリエンスを向上できます。 - メールは依然として、不正行為の主要な侵入口の1つです。
メール認証と監視を強化することで、リスクを大幅に軽減できます。 - 予防的な対策は、長期的なコスト削減にもつながります。
継続的に学習するシステムへ早い段階から投資することで、将来的な損失を抑えられます。
SaaSプラットフォームやデジタルエージェンシー、フィンテック系スタートアップを運営している方であれば、リアルタイムの不正検知についてよくご存じでしょう。
理論上は、理想的なソリューションに見えます。
しかし、不正の手口が絶えず変化する現在、特にAIツールが急速に進歩している状況では、リアルタイム検知だけでは十分とはいえません。
現代の不正行為者は、一度の成功で立ち止まることはありません。
より迅速かつ巧妙に手口を変えながら、防御側の対策をかいくぐろうとしています。
リアルタイム不正防止とは?
リアルタイム不正防止とは、不正行為を発生と同時に検知し、被害が生じる前に阻止するための仕組みです。
自動化システムや機械学習、継続的な監視を活用し、取引、ログイン、通信などを即座に分析します。
通常とは異なる場所からのログイン、異常な取引量、偽装されたメール送信者などの不審な行動パターンを特定し、その場でブロックしたり、確認が必要な事象としてフラグを付けたりします。
リアルタイムデータは、不正検知において重要な役割を果たします。
しかし、リアルタイムで検知できることと、不正を未然に防げることは同じではありません。
不正防止は、警告が発せられるよりも前の段階から始まります。
予測型システムでは、コンテキストや行動パターンを分析し、時間の経過とともに学習する仕組みを活用します。
多くの業界専門家は、リアルタイム検知を完全な解決策ではなく、最初の防御手段として捉えています。
長期的かつ効果的な防御体制を構築するには、不正防止と不正検知の両方を備えたソリューションが必要です。
この2つを連携させることで、絶えず手口を変える不正行為者に対しても、より効果的に対応できます。
リアルタイム不正検知だけでは不十分な理由
不正行為者は絶えずシステムの弱点を探しています。
その手口には、盗まれた認証情報の利用、IPアドレスのスプーフィング、正規ユーザの行動を装うことなどがあります。
リアルタイム検知では、複数回のログイン失敗やクレジットカード情報の不一致といった、明確な異常を検知できます。
しかし、より巧妙で継続的に変化するパターンを見つけることは困難な場合があります。
こうした不正を検知するには、長期的なデータ分析が必要です。
最近のフィンテック関連の統計によると、不正行為の試行件数は過去1年間だけで30%以上増加しており、過去のパターンを分析する重要性はこれまで以上に高まっています。
過去のデータや行動プロファイリングを利用しない不正検知モデルでは、普段とは異なる購入をした正規の顧客と、盗まれた情報を使って不正利用を試みている人物を区別することが難しくなります。
不足しているのはコンテキスト
不正防止の仕組みは、犯罪捜査に例えると理解しやすくなります。
すべてのユーザは、それぞれ固有のデジタルフットプリントを残します。
これには、普段のログイン方法やログインする時間帯、取引を行う時間帯などが含まれます。
こうした手がかりを組み合わせることで、そのユーザにとっての通常の行動パターンが見えてきます。
そこから外れる行動を捉えることで、不正が実際に発生する前に、その兆候を検知できる可能性があります。
これは、Steven Spielberg監督の『Minority Report』に登場する「Pre-Crime」の考え方にも似ています。
複数の情報を組み合わせた分析と過去のデータを活用することで、予測型の不正検知を、より予防的な不正対策へ発展させることができます。
弱点を把握し、今後起こり得る傾向を予測することで、現代の不正検知ソリューションは、単にリスクの高い支払いをブロックするだけではなくなっています。
新たな事例から継続的に学習し、検知精度を高めることで、時間の経過とともにより効果的な防御体制を構築できます。
包括的な不正防止フレームワークの構築
リアルタイムデータは、不正防止を構成する複数の防御レイヤの1つにすぎません。
以下の4つの方法を組み合わせることで、継続的に改善される防御サイクルを構築できます。
- 即時検知
- フィッシングやカードテストなど、進行中の攻撃を即座に検知して阻止します。
- 行動分析
- ユーザの行動を継続的に分析し、「通常の行動」と「不審な行動」を区別できるようにします。
- フィードバックループ
- 確認された不正事例をモデルへ反映し、予測精度を高めます。
- 適応型スコアリング
- 新しいデータやユーザの行動傾向に基づいて、リスクスコアを継続的に更新します。
重要なのは、不正を検知するだけではありません。
実際に発生した脅威から学習し、その結果を次の防御へ反映する、継続的に進化する不正防止の仕組みが重要です。
リアルタイム不正検知システムに共通する弱点
どれほど優れたリアルタイムソリューションでも、弱点はあります。
特に、他のシステムと連携せず単独で動作している場合は、十分に機能しないことがあります。
代表的な弱点は以下のとおりです。
- 誤検知
- 正当なユーザを誤ってブロックすると、不正による被害以上の損失につながる場合があります。
- ルール管理の負担
- 新しい脅威や顧客行動の変化へ対応するには、ルールを継続的に見直し、柔軟に調整する必要があります。
- データサイロ
- システム同士が連携していないと、重要な情報を必要なタイミングで共有できません。
- インテリジェンス共有の不足
- 脅威情報が十分に共有されなければ、あるプラットフォームで確認された不正が、別のプラットフォームや関連業界へ広がる可能性があります。
これらの弱点を解消するには、決済処理からカスタマーサポートまで、関連するシステムを連携させ、必要なデータを円滑に共有できるようにすることが重要です。
予防的な不正対策が長期的なコストを削減する理由
不正対策では、長期的に見ると、不正が発生してから対応するよりも、事前に予防する方がコストを抑えられます。
例えば、Juniper Researchの調査では、主に自動化された攻撃や認証情報の窃取によって引き起こされる世界のオンライン不正による損失は、2023年から2028年までに3,620億ドルを超える可能性があるとされています。
リアルタイム通知だけに依存している企業では、不正がすでに発生した後で対応せざるを得ない場合があります。
一方、予防的な対策を導入すれば、不正が実際の被害につながる前に兆候を捉え、損失を抑えられる可能性があります。
業界をまたいだデータ共有:見落とされがちな強み
不正は、必ずしも1つの企業やサービスの中だけで完結するものではありません。
例えば、ある企業で発生した情報漏洩が、別の企業を狙った合成ID詐欺につながる可能性があります。
そのため、脅威インテリジェンスの共有が非常に重要です。
異なる業界で確認された攻撃の情報を共有することで、それぞれのシステムが他の環境で発生した不正からも学習できるようになります。
例えば、フィンテック企業で確認された不正の手口が、後にSaaSアカウントの不正利用で使われる可能性があります。
適切なデータ共有は、メールやメッセージングプラットフォーム向けのサイバーセキュリティコンプライアンスチェックリストなどの基準への対応にも役立ち、複数のプラットフォームをまたいだ脅威の把握につながります。
メールセキュリティと取引不正の接点
オンライン不正の主要な侵入口の1つがメールです。
フィッシングや認証情報の窃取など、多くの攻撃がメールを起点として始まります。
そのため、メールセキュリティを強化することは、不正に対する組織全体のレジリエンス向上にもつながります。
取引監視とメール保護を連携させることで、メールを起点とする攻撃から不正取引までをカバーする、切れ目のない防御体制を構築できます。
まとめ:リアルタイム+予測型=持続可能な不正防止
これからの不正対策では、2つのアプローチを組み合わせることが重要です。
1つは、目の前で発生しているリスクを特定するリアルタイム検知です。
もう1つは、時間をかけて形成される不正のパターンや兆候を捉える予測分析です。
この2つを、フィードバックループ、適応型スコアリング、共有された脅威インテリジェンスと組み合わせることで、より強力な防御体制を構築できます。
不正そのものが近いうちになくなることはないでしょう。
むしろ、AIの進歩によって、不正行為者が利用できる手段はこれまで以上に増えています。
一方で、防御側もAIや高度な分析技術を活用できます。
リアルタイム監視と高度な行動分析を組み合わせることで、不正が発生してから対応するだけではなく、脅威を予測して先回りできる、より効果的な不正対策システムを構築できます。