No-replyメールの脆弱性を突くサイバー攻撃のイメージと、DMARC・DKIM・SPFによるメールセキュリティ対策の図解

なぜ「No-replyメール」がサイバーセキュリティ上の脅威となるのか

2025年2月27日
著者: Ahona Rudra
翻訳: 古川 綾乃

この記事はPowerDMARCのブログ記事 Why No-Reply Emails Are a Cybersecurity Hazard の翻訳です。
Spelldataは、PowerDMARCの日本代理店です。
この記事は、PowerDMARCの許可を得て、翻訳しています。


No-replyメールは、企業がコミュニケーションの効率化を目的として広く利用しています。
しかし、その一方向的な性質が、サイバーセキュリティ上の重大なリスクを招くことがあります。
返信を受け付けない仕組みのため、受信者はメッセージの真正性を確認しにくくなり、フィッシングやなりすましといったサイバー脅威にさらされやすくなります。

このリスクは、メールが主要な攻撃経路となっている金融業界で顕在化しやすい傾向があります。
金融関連のハッキングはサイバー犯罪者にとって利益が大きく、金融機関は格好の標的とされています。
米国FBIのインターネット犯罪苦情センター(IC3)の2023年の報告によると、フィッシングは最も報告件数の多いサイバー犯罪であり、298,878件の苦情が提出されました。

データ漏洩による財務的損失や評判の低下が数百万ドル規模に及ぶことを考えると、No-replyメールが組織のセキュリティにとって重大なリスクとなり得る点を看過することはできません。
これらの脅威に対抗するためには、企業はNo-replyメールの使用を見直し、包括的な防御戦略の一環として強固なサイバーセキュリティ対策を導入しなければなりません。

主なポイント

  1. No-replyメールは、受信者がメッセージの真正性を確認しにくくなるため、フィッシングやなりすまし攻撃に対して脆弱性を高めます
  2. No-replyアドレスからのメールは、スパムフィルターによってブロックされやすく、結果として配信率やエンゲージメントの低下、送信者の評判を損なう可能性があります。
  3. サイバー犯罪者は、メールのなりすまし、ビジネスメール詐欺(BEC)スキーム、ソーシャルエンジニアリングの手法を通じて、No-replyシステムを悪用し、機密情報を盗みます
  4. サイバー攻撃による経済的損失は莫大であり、データ漏洩によって企業は数百万ドルの損害を被り、評判や顧客の信頼を損ないます。
  5. メールセキュリティの強化は極めて重要であり、企業はDMARC、SPF、DKIMなどの認証プロトコルを実装し、受信トレイを脅威から監視し、AIによる検出システムを採用すべきです。

No-replyメールとは?

No-replyメールとは、企業が受信者からの返信を想定せずに送信するメールのことです。
一般的に、noreply@company.comdo-not-reply@business.comといった形式のアドレスが使われます。
これらのメールは、システムからの自動通知、登録確認、アラート配信などに広く利用されており、受信者に「返信は不要、あるいはできない」ことを暗黙的に伝える目的があります。

No-replyメールに潜むサイバーセキュリティ上のリスク

No-replyメールは迅速かつ効率的に情報を届けられる一方で、思わぬセキュリティ上の弱点を生み出すことがあります。

1.フィッシング攻撃への脆弱性

No-replyメールでは、受信者が内容を一方的に受け取ることになりがちで、疑問点を確認したり返信したりする手段が失われがちです。
その結果、特定のサイバー攻撃に対して無防備になりやすくなります。
サイバー犯罪者は、信頼されている企業ブランドや銀行、実在の人物になりすました偽メールを送り、No-replyの仕組みを巧妙に悪用します。

受信者が正当性を直接確認できないため、従業員が不正な依頼を本物だと信じてしまう可能性があります。
こうした攻撃は、不正アクセスや認証情報の窃取、さらには金融詐欺につながる恐れがあります。
そのため組織は、被害が発生する前に不審な挙動を検知・遮断できる高度な詐欺対策ソフトウェアを導入することで、これらの脅威に対抗する必要があります。

2.正当なメールがスパムと判断される可能性

一方向のメールに関する懸念は、ハッカーやサイバー犯罪者だけに限りません。
GmailやOutlookなどの主要なメールサービスでは、スパムフィルターによって通常のメールと迷惑メールが自動的に振り分けられています。
これらのフィルターは、送信者の評判、ユーザーの反応(開封や返信の有無)、コンテンツの関連性など、複数の要素をもとに判定を行います。

この点で、No-replyアドレスは不利になりがちです。
返信ややり取りが発生しないためユーザーの関与度が低下し、結果として送信元アドレスの評価が下がる可能性があるからです。
その結果、本来は重要であるはずのセキュリティアラートやカスタマーサポートからの通知が、受信トレイに届かずスパムフォルダに振り分けられてしまう恐れがあります。

3.機密情報が漏洩するリスク

メール署名から情報を収集することは、攻撃者にとって比較的容易です。
署名には、役職名、電話番号、住所、会社の連絡先などが含まれていることが多いためです。
たとえ短く簡潔な一方向のメールであっても、攻撃者はそこから情報を集め、ソーシャルエンジニアリング攻撃に利用する可能性があります。

このような悪用を防ぐため、組織はメールに記載する情報を必要最小限に抑えるべきです。
また、攻撃者が標的型攻撃のための情報収集を行いにくくなるよう、メールの構成や表現についても慎重に設計する必要があります。

サイバー犯罪者はどのようにNo-replyシステムを悪用するのか?

No-replyメールの仕組みを示すイメージ

サイバー犯罪者は、No-replyメールの特性をよく理解しています。
彼らは大量のメールを送信し、アドレスが有効かどうかを判別することで、将来の攻撃に向けた標的リストを精査していきます。

さらに、メールのなりすましやビジネスメール詐欺(BEC)など、複数の高度な手法を組み合わせ、信頼されている送信者を巧妙に再現します。
こうした精巧な攻撃により、受信者が無意識のうちにセキュリティを損なう行動を取ってしまう危険性があります。

メールのなりすましとホワイトリスト化のリスク

メールのなりすましとは、送信元アドレスを偽装し、あたかも信頼できる送信者から届いたかのように見せかける手法です。
この方法は、広範なフィッシング攻撃やBEC攻撃で頻繁に利用され、受信者を巧みに欺きます。

ユーザーが新しい送信者からのメールを「スパムではない」と安易に判断してしまうと、その後の攻撃に対して無防備になる可能性があります。
この行為が、結果的にメールアカウント全体のセキュリティ低下につながることもあります。

ビジネスメール詐欺(BEC)スキーム

BEC(Business Email Compromise)スキームは、攻撃者が信頼できる人物になりすまして行う、計画的かつ巧妙な詐欺手法です。
攻撃者は、上司や経営幹部、親しい同僚、あるいは長年の取引先を装って接触してきます。
こうした偽装によって、従業員は送金や機密情報の開示といった、組織に深刻な損害を与える行動を取らされてしまいます。

BECは綿密に準備され、ソーシャルエンジニアリングに大きく依存している点が特徴です。
現在、BECは最も被害額の大きいサイバー脅威の一つとされており、企業にとって壊滅的な財務損失をもたらすケースも少なくありません。
これらの詐欺は、組織化された犯罪グループによって実行されることが多く、例えばナイジェリアを拠点とする「SilverTerrier(シルバーテリア)」と呼ばれるサイバー犯罪集団は、世界中で多数のBEC攻撃に関与していることで知られています。

「No-replyメール」に潜むリスクとその軽減策

No-replyメールに伴うリスクを抑えるためには、企業はサイバーセキュリティを最優先事項として、メール運用を見直す必要があります。
具体的には、DMARCやDKIM、SPFといった強力なメール認証プロトコルを導入し、なりすましやフィッシング攻撃を防止することが重要です。

さらに、受信トレイを常時監視して不審な挙動を検知し、リアルタイムで報告できる体制を整えることで、脅威を迅速に把握し、適切に対処できます。
返信可能なメールアドレスを用いて双方向のコミュニケーションを確保することも、受信者がメールの正当性を確認し、疑わしい内容を報告するための有効な手段となります。

メール詐欺への対抗策としての財務モニタリング

2024年には、データ侵害による世界平均の損害額が488万ドルに達しました。
この金額は前年から10%増加しており、過去最高水準です。
被害は直接的な金銭損失にとどまらず、企業ブランドの評価低下や顧客からの信頼喪失にもつながります。

その結果、評判の低下やブランド価値の毀損といった、回復が困難な影響を受ける可能性があります。
さらに、データ保護規制への違反によって、規制当局から罰金を科されるリスクも見過ごすことはできません。

財務モニタリングツール(例:Finance Tracker)は、異常を早期に検知し、メール経由の攻撃による詐欺を防ぐうえで重要な役割を果たします。
たとえば、フィッシングメールをきっかけに従業員が誤って不正取引を開始してしまった場合でも、財務モニタリングツールがリアルタイムで異常を察知し、深刻な被害が発生する前に対応することが可能です。
AIを活用した不正検知システムと組み合わせることで、これらのツールは不正アクセスやアカウント乗っ取り、金銭詐欺に対する能動的な防御を実現します。

サイバーセキュリティ意識を根付かせる組織文化

技術的な対策だけでなく、従業員向けの教育やトレーニングも欠かせません。
フィッシング攻撃やなりすましメール、ソーシャルエンジニアリングの手口を見抜けるようにすることで、人的リスクを大幅に低減できます。
サイバーセキュリティ意識が組織文化として定着すれば、No-replyメールの弱点を突いた攻撃に遭う可能性も抑えられます。

まとめ

No-replyメールは利便性が高いように見える一方で、フィッシングやなりすまし、金銭詐欺といった深刻なサイバーセキュリティ上のリスクを引き起こします。
強固なメール認証の導入や財務モニタリングツールの活用、さらにサイバーセキュリティ意識を育てる組織文化を構築することで、企業はこれらの脅威から自らを守ることができます。
今こそNo-replyメールの運用を見直し、安全な双方向コミュニケーションを重視することで、組織のデータと財務、そして信頼を守ることが求められています。