メールコミュニケーションにおけるデータプライバシー:コンプライアンス、リスク、およびベストプラクティス

メールコミュニケーションにおけるデータプライバシー:コンプライアンス、リスク、およびベストプラクティス

2024年7月18日
著者: Ahona Rudra
翻訳: 岩瀨 彩江

この記事はPowerDMARCのブログ記事 Data Privacy in Email Communication: Compliance, Risks, and Best Practices の翻訳です。
Spelldataは、PowerDMARCの日本代理店です。
この記事は、PowerDMARCの許可を得て、翻訳しています。


EUが2018年に一般データ保護規則(GDPR)を採択して以来、企業は自社のメールマーケティングの実践方法を見直さざるを得なくなりました。
プライバシー規制に違反した場合の影響は冗談では済みません。
Amazonが7億4600万ユーロという巨額の罰金を科された事例が、その十分な証拠です。

一方で、GDPRはメールマーケティングキャンペーンの成功を妨げるものではありません。
自社のオーディエンスを慎重にセグメント化し、戦略を立てる企業は依然として投資利益率(ROI)を生み出しており、さらに重要なことに、購読者との有意義な関係を築いています。

もしあなたがこのような効果を目指しているのであれば、読み進めてください。
以下では、ブランドが遵守すべき最も重要な規制を挙げるとともに、いくつかのリスクを分析し、メールマーケティングキャンペーンで見込み客を転換し続けるためのベストプラクティスを紹介します。

重要なポイント

  1. 購読者から明確かつ十分な説明に基づいた同意を得ることは、GDPRの遵守に不可欠です。
  2. データ収集の方法やコミュニケーションの頻度について透明性を保つことは、購読者との信頼関係を構築する上で極めて重要です。
  3. 購読者には自分の個人データの削除を要求する権利があり、これにより適切なデータ管理の必要性が一層強調されます。
  4. 潜在的な侵害から購読者情報を保護するためには、強固なデータ保護対策を実施する必要があります。
  5. データ収集を最小限に抑えることは、コンプライアンス上の問題のリスクを軽減しつつ、購読者に関連性の高いコミュニケーションを確保するのに役立ちます。

主要なGDPRコンプライアンスの概念

EUの一般データ保護規則(GDPR)には、個人データを安全かつ公正に処理することを目的とした複数の条項があります。
しかし、メールコミュニケーションの文脈においては、特に注目すべき4つの主要な概念があります。

1.明確かつ十分に説明された同意

購読者から明確で十分な説明に基づいた同意を得ることは、GDPRにおける最も重要な変更点の一つといえます。
これは、将来的な受信者が自発的に自分のメールアドレスをブランドに提供し、プロモーションの案内を受け取ることに同意する必要があることを意味します。

したがって、GDPR以前によく見られた「Webサイト訪問者にあらかじめチェックされたボックスを提示し、週刊のプロモーションメールに自動的に登録させる」という手法は、もはや過去のものです。
現在では、購読者自身がこれらのボックスにチェックを入れることが必須であり、理想的には、どのボックスにチェックを入れるかを自分で選択できるようにすることが望まれます。

2.透明性と説明責任

この規制は、前述の規制の論理的な延長線上にあります。
「明確かつ十分に説明された」同意を得るためには、ブランドが自社の方針について透明性を保つことが求められます。
これには、企業がマーケティング資料をどのくらいの頻度で送信するかだけでなく、どの個人データを収集し、それをフィッシング攻撃などからどのように保護するのかも含まれます。

この規制に準拠する唯一の方法は、オプトインフォームに必ず組織のプライバシーポリシーへのリンクを含めることです。
ただし、このポリシーを理解しやすいものにすることも重要です。
「誰も読まないから」という昔ながらの言い訳は、もはや通用しません。
意図的にポリシーを分かりにくくしているブランドは、法的な影響や多額の罰金を科されるリスクがあります。

データプライバシー管理ソフトウェアを導入することで、これらの規制への準拠を支援できます。
特に大量の顧客データを扱う企業にとっては有効です。
また、チームがGDPRの研修コースを受講することで、規制への理解を深め、すべての業務プロセスにおいて一貫した適用を確保することも役立ちます。

3.購読者のためのデータ削除オプション

GDPRの下では、すべてのメール購読者には「忘れられる権利」があります。
これは、購読者が自分の個人データの削除を要求した場合、そのデータを削除しなければならないことを意味します。

誰かがメーリングリストから退会した場合も、これまでに蓄積されたすべてのデータを削除する必要があります。
このデータ削除のプロセスは、明確に定義されたデータライフサイクルの必要性を強調しています。

4.購読者データの保護

購読者(サブスクライバー)データを保護するためのセキュリティ対策を示す図

フィッシング攻撃の件数は増え続けており、その手口もますます巧妙になっています。
メールは特にフィッシング攻撃の標的になりやすいため、企業は購読者の個人データを最大限安全に保護する義務があります。
これには、データ収集および分析の最小化、機密データの暗号化、定期的なセキュリティチェックの実施など、さまざまな取り組みが含まれます。

もしシステムが侵害された場合、企業はその責任を問われることになります。
これは、GDPRのもとでメールマーケティングキャンペーンを実施する企業にとって、もう一つの大きなリスクとなります。

これらのポイントは、プロモーションキャンペーンを実施する際にメールマーケターが従うべき主要なルールを要約したものです。
それでは次に、リスクを軽減し、より理解のある購読者をメーリングデータベースに引きつけ続けるためのベストプラクティスについて見ていきましょう。

GDPRに準拠するためのメールマーケティングのベストプラクティス

GDPRに準拠するための最善のEメールマーケティング実践方法を示す図

メールマーケティングにおいて、GDPRの主要なポイントは本質的に4つの重要な側面に集約されます。
ベストプラクティスはより多様であり、多くの場合、ビジネスの特性に大きく依存します。
それでも、以下で説明する戦略を実践することで、企業が間違った方向に進むことはほとんどありません。

明確な言葉で同意を得る
あらゆる曖昧さを避けることが、GDPRを遵守する最も確実な方法です。
すべての登録フォームでは明確で分かりやすい言葉を使用しましょう。
法律用語や曖昧な表現は避けてください。
購読者がどのような資料を、どのくらいの頻度で受け取るのかを明確に記載することが重要です。

例えば、「ニュースレターを購読することで、当社製品に関する月次アップデートを受け取ることに同意したものとみなします」といった文言です。
ここで重要なのは「同意」という点です。
GDPRにおいては、ユーザの同意が最も重視される要素となります。
詳細な同意オプションを検討する
場合によっては、ブランドが異なる種類のプロモーション資料を送付したいと考えることもあります。
その場合、Webサイト訪問者が選択できる複数のチェックボックスを設けるのが最良の方法です。
月次ニュースレター、割引・プロモーション情報を分けて設定することは、ユーザが受け取る情報をある程度自分で管理できるようにする堅実な戦略です。

この方法により、マーケターはGDPRの遵守と、受信を自発的に希望する購読者に対して的確にマーケティング資料を届けるという、二つの目的を同時に達成できます。
多くのブランドは、プロモーション資料を以下のように分類できます。
  • 割引およびプロモーション
  • ニュースレター
  • 製品アップデート
  • チュートリアルおよび解説資料
これらはいずれも、メールの更新情報、ポッドキャスト、ブログ、動画など、さまざまな形式で配信することができます。
ただし、どの形式を選ぶ場合でも、法的な問題を避けるためには受信者からの明確な同意が必須です。

また、これらのチェックボックスを事前に選択済みにしておくことはもはや許されません。
最終的な判断は完全にユーザ自身に委ねられます。
プライバシーポリシーを分かりやすくアクセス可能にする
GDPRのもとでは、企業はプライバシーポリシーを読者がアクセスしやすく、かつ理解しやすい形で提供する義務があります。
もちろん、登録フォームとは異なり、正式なプライバシーポリシー全文からすべての法律用語を取り除くのは容易ではありません。
最善の方法は、文書を丁寧に確認し、曖昧な表現を排除して、誰にでも理解できるようにすることです。
購読解除ボタンを隠さない
これは絶対に守るべきルールです。
コンピュータの基本的な操作しかできないユーザでも、ニュースレターの購読を簡単に解除できるようにする必要があります。
送信するすべてのプロモーションメールに、購読解除リンクを必ず含めてください。

購読解除の理由を尋ねること自体は問題ありませんが、ユーザが数回のクリックで手続きを完了できるようにしておくことが重要です。
2024年のGoogleおよびYahooのメール送信者要件では、大量メール送信者に対して「ワンクリック購読解除」を義務化しています。
強固なデータ保護対策を講じる
企業は、不正なデータ侵害に対して責任を問われる可能性があるため、データセキュリティの専門家を雇用し、定期的な安全監査を実施するのが最善です。
これには、暗号化、データアクセスの監視と制御、第三者提供者との安全関連契約の締結などが含まれます。
適切に訓練された専門家がいなければ、データの安全性を維持することは困難になり得ます。

特に中小企業は、大企業と同様にサイバー攻撃の標的になりやすく、十分なセキュリティ対策への投資が少ない分、むしろリスクが高い場合もあります。
さらに、メールデータの保護を強化し、なりすまし攻撃を防止するために、DMARCの導入が強く推奨されます。
データ収集を最小限に抑える
ブランドがGDPRを遵守するためのもう一つの有効なアドバイスは、データ収集を最小限にすることです。
この方針は、データ侵害が発生した際の潜在的な被害を軽減し、GDPRが重視する購読者のプライバシーを保護します。
その目的は「必要最低限の情報だけを収集する」ことにあり、同時に、適切なリードセグメンテーション(見込み客の分類)が行えるだけの情報は確保する必要があります。

小売業やEコマースなどのブランドでは、これはそれほど難しいことではありません。
名前、年齢、性別といった基本的な情報だけで、十分にセグメント化されたマーケティングキャンペーンを実施できます。
一方、プロフェッショナル向けのSaaSソフトウェアを宣伝する場合などは、やや難易度が上がるかもしれません。
それでも、罰金やその他の法的影響を回避するためには、データ収集を最小限に抑えることが依然として重要です。

これらのコンプライアンス要件を念頭に置き、GDPR違反を避けるために最も適した実践方法を選ぶことで、企業はメールキャンペーンをスムーズに運営することができます。
結局のところ、重要なのは「明確な同意を得ること」「購読者のプライバシーを尊重すること」「価値ある情報を送ること」です。
また、これらの実践は、組織がどのような法的規制の対象であっても、メールキャンペーンを成功させるための基本でもあります。