DNSとは?
DNSの脆弱性が招く深刻リスク
2024年5月9日
著者: Ahona Rudra
翻訳: 永 香奈子
この記事はPowerDMARCのブログ記事 What is DNS? の翻訳です。
Spelldataは、PowerDMARCの日本代理店です。
この記事は、PowerDMARCの許可を得て、翻訳しています。
DNSはインターネットの「電話帳」であるにもかかわらず、サイバーセキュリティ戦略においてDNSの脆弱性は見落とされがちです。
DNSは、人間が判読できるドメイン名を機械が判読できるIPアドレスに変換することで、ユーザーとWebサイト間のシームレスなやり取りを可能にします。
ドメインは、組織のオンライン上のアイデンティティを確立する上で重要な役割を果たしますが、それと同時にさまざまなドメインの脆弱性も伴います。
攻撃者はこれらの脆弱性や抜け穴を悪用し、ドメインやそれに関連するシステムのセキュリティを侵害することができます。
残念ながら、これらの脆弱性はサイバー攻撃の主要な標的となりやすく、その結果としてデータ漏洩、サービスの停止、そして重大なレピュテーションの損失を引き起こします。
デジタル技術とインターネットへの依存が高まる中で、攻撃者は組織の仮想的な存在の基盤となるドメインを狙っています。
IDCの2022年版Global DNS Threat Reportによると、世界中の88%以上の組織がDNS攻撃の被害を受けています。
企業は平均して年間に7回のDNS攻撃を受けており、各インシデントの損失は約94万2,000ドルにのぼります。
過去数年間でドメインの脆弱性を標的とした攻撃はより一般的になっており、2021年から14%の増加が見られ、APAC地域ではその損失額が約103万6,040ドルに達しています。
重要なポイント
- DNSの脆弱性は、設定ミス、DNSSECの未導入、または脆弱なプロトコルに起因することが多く、データ漏洩、サービスの停止、の失墜につながる可能性があります。
- 攻撃者は、トンネリング、DDoS、ハイジャック、キャッシュポイズニングといった手法でDNSを悪用し、類似ドメインや不十分なサーバ構成を利用することがよくあります。
- AIを利用したDNS攻撃やゼロデイ脆弱性などの新たな脅威には、能動的な監視と最新のセキュリティ対策が求められます。
- 主な予防策としては、DNSSECの実装、堅牢なメール認証(SPF、DKIM、DMARC)、リアルタイム監視、暗号化されたDNSプロトコル(DoH/DoT)の使用、定期的な監査などが挙げられます。
- DNS解析ツールや脆弱性スキャナーの活用、適切なサーバ構成の確保は、ドメインのセキュリティを維持するうえで極めて重要です。
DNSの脆弱性とは何ですか?
DNSの脆弱性とは、ネットワークセキュリティを侵害するために攻撃者に悪用され得る、ドメインネームシステムにおける弱点のことです。
これらは、DNSプロトコル自体に内在するバグや弱点、または設定ミスや不適切な導入手法など、さまざまな原因によって発生する可能性があります。
企業のうち、消費者向けのレジストラを使用し、かつレジストリロックを導入しているのはわずか5%であり、これはドメイン名が不正に改竄されるのを防ぐための費用対効果の高い手段です。
このような設定の不整合が、サイバー攻撃のリスクを高める要因となります。
DNS攻撃の例として、DNSトンネリングがあります。
この手法により、攻撃者はネットワーク接続を侵害し、危険にさらすことが可能になります。
その結果、攻撃者は標的となった脆弱なサーバにリモートアクセスし、それを悪用することができます。
DNSの脆弱性はまた、サイバー犯罪者が重要なサーバを標的にしてダウンさせたり、機密データを盗んだり、ユーザを詐欺的かつ危険なWebサイトに誘導したりすることを可能にします。
DNSサーバのセキュリティ設定が不十分であると、サーバ情報の不正な開示が発生し、攻撃者がDNSデータを改竄することで、ユーザに誤った情報を信じさせ、更なる攻撃を可能にしてしまいます。
ネットワークを危険にさらす5つの重大なDNSの脆弱性
一部の脆弱性は非常に深刻で、ネットワークを危険にさらす可能性があります。
以下は、より広範に見られるDNS攻撃の脆弱性リストです。
その他関連する脆弱性には、Webアプリケーションの弱点が含まれます。
ここでは、オリジンサーバのIPアドレスを特定することで、セキュリティ対策を回避できる場合があります。
また、堅牢なメール認証の欠如により、フィッシングやなりすましが容易になります。
1.オープンDNSリゾルバ
オープンブラウザを実行することは、深刻なセキュリティリスクを意味します。
オープンDNSリゾルバとは、インターネットに公開されており、すべてのIPアドレスからのクエリを許可するリゾルバのことです。
言い換えると、あらゆる送信元からのクエリを受け入れ、応答します。
攻撃者はオープンリゾルバを悪用して、DoS(サービス拒否)攻撃を開始し、インフラ全体を危険にさらす可能性があります。
DNSリゾルバは意図せずにDNSアンプ攻撃の一因となります。
これは、攻撃者がDNSリゾルバを利用して被害者に大量のトラフィックを送りつけるDDoS(分散型サービス拒否)攻撃です。
いくつかの対策としては、DNSリゾルバへのアクセス制限、レート制限(RRL)の実装、信頼できる送信元からのクエリのみを許可することが挙げられます。
DNSリゾルバを保護し、悪用を防ぐために有用なツールの一つがCisco Umbrellaです。
これは、デジタルサイバー脅威に対する最初の防御層を提供するクラウドベースのネットワークセキュリティプラットフォームです。
2.DNSSECの未導入
DNSSECは、既存のDNSレコードに暗号署名を追加することで、安全なドメインネームシステムを提供します。
DNSSECが欠如しているということは、サイバー犯罪者がDNSレコードを改竄し、インターネットトラフィックを不正かつ悪意のあるWebサイトへ誘導することが可能であることを意味します。
これにより、個人情報の盗難、重大な金銭的損失、その他のプライバシーやセキュリティ上の損失が発生する可能性があります。
このような事態を避けるためには、DNSサーバでDNSSECを有効にし、定期的にDNSSECの検証を行い、DNSSECの実装に関する監査を定期的に実施することができます。
また、適切に実装されていることを確認するために、DNSSECチェッカーを使用して検証を行うことを試みてください。
3.DNSサーバ設定の不備
DNSサーバの設定ミスには、ゾーン転送の開放やアクセス制御の脆弱性が含まれる可能性があります。
設定の種類に関係なく、フラッド攻撃やリモートコード実行などの深刻な攻撃に直面する可能性があります。
フラッド攻撃(別名:DoS攻撃)とは、攻撃者がシステムに対して過剰なトラフィックを送信し、正当なネットワークトラフィックの処理を妨害するタイプの脅威を指します。
リモートコード実行では、攻撃者が被害者のデバイスにリモートでアクセスし、変更を加えることが可能になります。
これらの攻撃は、情報漏洩やデータ侵害を引き起こす可能性があります。
セキュリティ設定の不備は、サーバ情報の不正な開示を引き起こし、DNSや内部サーバの運用を妨げる可能性もあります。
DNSサーバの設定不備に対する緩和策には、不正なゾーン転送の無効化、DNSサーバに対する厳格な権限設定、DNSサーバ設定の定期的なレビューと更新が含まれます。
QualysのようなDNS脆弱性スキャナを使用することで、設定不備を特定することができます。
4.監視およびログ記録の不十分さ
DNSトラフィックを継続的に監視しない場合、ネットワークはDNSハイジャックやDNSトンネリング攻撃に対して脆弱になります。
そのため、リアルタイムのDNSトラフィック監視を実施し、DNSクエリおよび応答の詳細なログ記録を有効にし、不審なパターンを検出するためにログを定期的に分析することが重要です。
このプロセスを支援するために、異常を監視するDNSトラフィック向けの侵入検知システムを活用することができます。
また、DMARCレポートを活用することで、メール認証に関するインサイトを得て、スプーフィングのような潜在的脅威を特定することができます。
5.脆弱なプロトコルの使用
DNSクエリに暗号化されていないUDPを使用することは、なりすましや盗聴攻撃に対して脆弱になります。
したがって、DNS over HTTPS(DoH)またはDNS over TLS(DoT)の実装が必要です。
その他の有効な対策としては、暗号化されたDNSプロトコルと併用してDNSSECを使用すること、すべてのDNS通信に対してTLS/HTTPSを強制することが含まれます。
Cloudflare DNSを利用することで、インターネットを高速かつプライベートに閲覧する手段を得ることができます。
さらに、SPF、DKIM、DMARCといった強固なメール認証プロトコルは、なりすましメールやフィッシング攻撃を防ぐために極めて重要です。
特に、大手企業を標的とする類似ドメインの75%以上がこのような悪意のある活動に使用されていることを考慮すると、これらの対策は不可欠です。
新たに出現するDNSセキュリティの脆弱性
既存の攻撃に加えて、新たな形態のDNS攻撃も出現しています。
たとえば、AIを活用したDNS攻撃やゼロデイDNSエクスプロイトなどは、世界中のユーザにさらなる危険をもたらす可能性があります。
既存のDNS攻撃に対しては、すでに効果的な対策や緩和策が考案されていますが、新たに出現するDNS攻撃に対抗するための戦略を考案するには、今後も努力が必要です。
このためには、最新の動向について常に情報を得ておくこと、そして新たな脅威に対して迅速かつ効果的に対応できる柔軟性が求められます。
1.AIを活用したDNS攻撃
人工知能は、DNS攻撃の自動化およびスケーリングに利用されており、これにより攻撃はより巧妙になり、検出が困難になっています。
AIを活用した攻撃に対抗するには、自らもAIベースの脅威検出ツールを活用することで、「AIの言語」で対応することができます。
また、進化するAI主導の攻撃に対応するために、セキュリティ対策を定期的に更新するべきです。
2.ゼロデイDNSエクスプロイト
DNSソフトウェアの未修正の脆弱性は、修正が提供される前に悪用される可能性があります。
これは、ネットワークセキュリティに対して重大なリスクをもたらすことがあります。
新たなDNS脆弱性に関する情報を得るために、CVEデータベースを監視し、DNSインフラの定期的な脆弱性スキャンを実施してください。
また、即時のアップデートが困難な場合には、仮想パッチを実装することも有効です。
DNSセキュリティが重要である理由:リスクの理解
DNSはインターネット通信の基盤として機能しています。
DNSにおける脆弱性は、以下のような深刻な結果をもたらす可能性があります。
DNSトンネリングによるデータ窃取とスプーフィング
DNSトンネリングは、他のプロトコルの詳細をDNSクエリおよびレスポンスに埋め込むDNS攻撃手法の一種です。
DNSトンネリングに関連するデータペイロードは、ターゲットのDNSサーバに取り付くことがあり、これによりサイバー犯罪者がリモートサーバをシームレスに制御することが可能になります。
DNSトンネリングの過程では、攻撃者は侵害されたシステムの外部ネットワーク接続を利用します。
攻撃者はまた、権威サーバとして機能する可能性のあるサーバを制御下に置く必要があります。
このアクセスにより、彼らはサーバ側のトンネリングを実行し、データ窃取を促進することができます。
DNSアンプ攻撃を利用したDDoS攻撃によるサービス停止
DNSアンプ攻撃は、DNSリゾルバを利用して、被害者に過剰なトラフィックを送りつけることを目的としたDDoS攻撃の一種です。
この不正なトラフィックの圧倒的な量は、ネットワークリソースに負荷をかけ、過負荷状態にする可能性があります。
これにより、数分、数時間、あるいは数日に及ぶサービス停止が発生することがあります。
DNSハイジャックおよびキャッシュポイズニングによる信用失墜
DNSポイズニングは、ユーザを危険なWebサイトへ誘導するようにドメインネームシステムが改竄されることを指しますが、ドメインハイジャックはドメインの所有権が不正に移転されるものであり、深刻な財務的および信用上の損害を伴います。
キャッシュポイズニングもまた、同時に複数のユーザに影響を及ぼし、その機密情報を危険にさらす可能性があるため、信用失墜につながる可能性があります。
DNSの脆弱性を防ぐために

DNSベースの攻撃からネットワークを保護するためには、インターネットの機能性とセキュリティを維持する上でのDNSインフラの重要な役割を認識することが重要です。
悪用されたDNSの脆弱性は、データ侵害、マルウェア感染、サービスの中断、金銭的損失といった深刻な結果をもたらす可能性があります。
サイバー攻撃者は、ユーザを悪意あるWebサイトへリダイレクトしたり、機密データを傍受したり、サービスを利用不能にしたりするために、DNSサーバを標的にすることがよくあります。
このようなリスクからの確実な保護を実現し、セキュリティ体制を強化するためには、包括的なドメイン脆弱性管理技術を用いて、これらの侵入経路にパッチを適用することが極めて重要です。
- DNSSECを有効化して、DNSレスポンスを暗号的に検証します。
- SPF、DKIM、DMARCなどの堅牢なメール認証プロトコルを実装します。
- DNSソフトウェアに対して堅牢なパッチ管理プロセスを実装します。
- DNSサーバの設定を強化し、アクセスを制限し、不正なゾーン転送を無効化します。
- DNSトラフィックをリアルタイムで監視し、異常や潜在的な攻撃を検出します。
メールチャネルの可視性のためにDMARCレポートを活用します。 - DNSインフラおよび関連するWebアプリケーションに対して、定期的な脆弱性スキャンとペネトレーションテストを実施します。
- DoHやDoTのような暗号化されたDNSプロトコルを使用します。
- DNSレコード検証ツールを活用して問題を修正し、適切なDNS設定を維持します。
- サイバー攻撃、データ管理、ソーシャルエンジニアリング、フィッシングに関する従業員トレーニングを実施します。
PowerDMARCのDNSタイムラインおよびセキュリティスコア履歴を使用することを検討し、時間をかけてドメインのセキュリティ体制を強化しましょう。
当社のDNSタイムライン機能は多面的であり、包括的なDNSレコードの監視に対してバランスの取れた多くの利点を提供します。
以下は、当ツールが提供する多数の機能の一部です。
徹底したDNS変更の追跡
PowerDMARCのDNSタイムライン機能は、DNSレコードの詳細な概要を提供し、発生する更新や変更も把握します。
この機能は、以下の変更を監視します。
このツールはまた、各変更を視覚的にわかりやすく魅力的な形式で記録します。
以下の機能を提供します。
- 徹底した監視のための対応する関連タイムスタンプ
- 情報を定量化しやすくするドメインセキュリティ評価
- 構成における欠落要素やその不在を示す重要な検証ステータス
変更内容のわかりやすい説明
PowerDMARCのツールは、DNSレコードの変更をユーザが理解しやすい形で説明します。
DNSタイムライン機能では、旧レコードと新レコードの両方を並べて表示します。
さらに、新しいレコードにおける差異を一覧表示する専用の列も含まれています。
これにより、この分野に全く不慣れで、旧レコードと新レコードを読み取り、分析し、比較する技術的な知識を持たない方でも、理解しやすくなります。
フィルタリングオプション
DNSの変更を、ドメインまたはサブドメイン、レコードタイプ(例:DMARCやSPF)、期間などに応じてフィルタリングすることができます。
セキュリティスコア履歴タブ
セキュリティスコア履歴タブでは、ドメインのセキュリティ評価を時系列で視覚的にわかりやすく表示します。
最後に
本記事では、DNSの脆弱性とは何か、なぜDNSセキュリティが重要なのか、そしてこれらの脆弱性を防ぐために取るべき行動についての重要な知見を取り上げました。
DNSSEC、DMARC、DKIM、およびSPFを正しく実装することで、ドメインのセキュリティを向上させると同時に、さまざまなメールセキュリティの脆弱性を防ぐことができます。
ドメインは、デジタルプレゼンスおよびサイバー攻撃の入り口であるため、悪意ある攻撃から保護するためには、積極的な対策を講じることが不可欠です。
PowerDMARCは、メール認証プロトコルを構成するためのDNSレコードの正しい実装を支援します。
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