DMARC Dual Alignment

GmailやOutlook.comが求めるSPFとDKIM双方のDMARCアライメント

本記事は2026年7月に、2026年5月公開のDMARCbis(RFC 9989/9990/9991)の内容を反映して更新しています。

DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting, and Conformance)の仕様(RFC 9989)では、SPFまたはDKIMのいずれか一方がアライメントに合格すればDMARCは合格(pass)となります。
しかし、GmailやOutlook.comといった主要なメールプロバイダは、この最低基準を超えて、SPFとDKIMの双方でDMARCアライメントに合格することを強く求めるようになっています。
ここでは、その背景と各プロバイダの要件、そして具体的な対応方法について解説します。

1. DMARCアライメントとは

DMARCアライメントとは、メールのヘッダFrom:ドメインと、SPFやDKIMで認証されたドメインが一致(アライメント)しているかを検証する仕組みです。

具体的には、以下の2つのチェックが行われます。

SPFアライメント

SMTP通信時のMAIL FROMアドレス(エンベロープFrom、RFC 5321のMailFromアドレス)のドメインと、ヘッダFrom:(RFC 5322のFromアドレス)のドメインが一致しているかを検証します。
SPF認証自体が合格していても、MAIL FROMドメインとヘッダFromドメインが異なればSPFアライメントは失敗します。

DKIMアライメント

DKIM署名ヘッダのd=タグで指定されたドメインと、ヘッダFrom:のドメインが一致しているかを検証します。
第三者署名(例えば、ESPが自社ドメインで署名している場合)では、DKIMアライメントは失敗します。

RFC 9989での規定(旧RFC 7489)

現行のDMARC仕様であるRFC 9989は、2026年5月にIETFが公開したもので、2015年公開のRFC 7489を正式に廃止して置き換えたものです。
RFC 9989でも、SPFまたはDKIMのいずれかがアライメントに合格すればDMARCはpassとなるという基本原則は維持されています。
つまり、DMARC標準としては引き続き「OR」条件です。
しかし、これはあくまで最低基準であり、メールプロバイダがより厳しい条件を課すことを妨げるものではありません。
RFC 9989には、レベルの異なる2つの記述があります。
Section 4.5では、一般的なDMARC運用としてSPFとDKIM双方を認証メカニズムとして使うことがRECOMMENDED(推奨)とされています。
一方、Section 8「Conformance Requirements for Full DMARC Participation」では、Domain Ownerが「完全な参加」を満たすための条件として、SPFアライメントとDKIMアライメントの双方がMUST(必須)と明記されています。
つまり、DMARCの合否判定自体は引き続きOR条件ですが、標準仕様が定める「完全な参加」の水準では、双方のアライメントが必須とされています。

2. Googleの要件 ― Gmailの送信者ガイドライン

Googleはメール送信者ガイドラインにおいて、1日5,000通以上の大量送信者(Bulk Sender)に対して以下の要件を課しています。

さらに、Googleの送信者ガイドラインFAQでは、以下のように明記されています。

To ensure reliable authentication, we recommend all senders fully align DMARC to both SPF and DKIM.
It's likely that DMARC alignment with both SPF and DKIM will eventually be a sender requirement.

(信頼性の高い認証を確保するため、すべての送信者がSPFとDKIMの双方でDMARCアライメントを完全に設定することを推奨します。SPFとDKIMの双方でのDMARCアライメントは、将来的に送信者要件となる可能性が高いです。)

2025年11月以降、Googleは非準拠メールに対する施行を強化し、一時的なエラー(4xx)および恒久的な拒否(5xx)を適用するようになっています。
Google公式のFAQ(support.google.com)では、どのチェックで失敗したかがエラーコードごとに明記されています。
このうち、ヘッダFrom:のアライメント不一致に対応するのは一時エラーの4.7.32で、公式FAQ上には恒久エラー版の記載はありません。

Gmailの施行エラーコード一覧(Google公式FAQ、2026年7月時点)
エラーコード対象チェック内容
4.7.23PTR送信元IPにPTRレコードがない、または逆引きが一致しない(一時エラー)
4.7.27 / 5.7.27SPFSPF認証が合格しなかった
4.7.29 / 5.7.29TLSTLS接続が使用されていない
4.7.30 / 5.7.30DKIMDKIM認証が合格しなかった
4.7.31DMARCDMARCレコードの欠如、またはポリシー未指定(一時エラーのみ確認)
4.7.32アライメントヘッダFrom:がSPFまたはDKIMのアライメント済みドメインと一致しない(一時エラーのみ確認)
5.7.25PTR送信元IPにPTRレコードがない、または逆引きが一致しない(恒久エラー)

3. Microsoftの要件 ― Outlook.comの送信者要件

Microsoftは2025年5月5日から、Outlook.com、Hotmail.com、Live.comへの大量送信者(1日5,000通以上)に対して、以下の認証要件を施行しています。
Microsoft Tech Community公式ブログにて発表されました。

MicrosoftのDMARC設定ガイドでは、DMARCの仕組みとして以下の2つのチェックを行うと説明されています。

SPFによるチェック
メッセージがMAIL FROMアドレスのドメインの認可された送信元から送信されたこと(SPFの基本要件)を確認し、かつMAIL FROMとFrom:のドメインがアライメントしていることを確認する。
DKIMによるチェック
メッセージに署名したドメイン(DKIM-Signatureヘッダのd=値)が、From:アドレスのドメインとアライメントしていることを確認する。

非準拠のメールは、エラーコード550; 5.7.515 Access denied, sending domain [SendingDomain] does not meet the required authentication level.で拒否されます。

4. なぜ「双方」が求められるのか

SPFとDKIMの双方でのDMARCアライメントが求められる背景には、以下の理由があります。

SPFだけでは不十分なケース

メール転送(forwarding)が行われると、転送サーバーのIPアドレスは元の送信ドメインのSPFレコードに含まれていないため、SPF認証が失敗します。
この場合、DKIMが合格していればDMARCアライメントを維持できます。

DKIMだけでは不十分なケース

一部のメーリングリストやセキュリティゲートウェイでは、メール本文やヘッダが改変されることがあり、これによりDKIM署名の検証が失敗する場合があります。
この場合、SPFが合格していればDMARCアライメントを維持できます。

双方合格による堅牢性の向上

SPFとDKIMの双方でDMARCアライメントに合格していれば、メール転送時にSPFが壊れても、メール本文改変時にDKIMが壊れても、残りの一方でDMARCアライメントが維持されます。
これにより、メール配信の信頼性が大幅に向上します。
主要メールプロバイダが双方を求めるのは、この冗長性(redundancy)を確保するためです。

5. 具体的な対応方法

SPFアライメントの確保

SPFアライメントを確保するためには、SMTP通信のMAIL FROMアドレスのドメインと、ヘッダFrom:のドメインを一致させる必要があります。

DKIMアライメントの確保

DKIMアライメントを確保するためには、DKIM署名のd=タグのドメインと、ヘッダFrom:のドメインを一致させる必要があります。

DMARCレコードの設定

DMARCレコードは、最低でもp=noneで公開し、RUAレポートの受信先を設定します。
理想的には、SPFとDKIMの双方のアライメントが確認できた段階で、p=quarantineからp=rejectへと段階的にポリシーを引き上げていきます。
ただし、2026年5月公開のRFC 9989では、メール転送やメーリングリストを経由するトラフィックが多いドメインに対して、p=rejectを一律に適用することは推奨されていません。
レシーバー側もそうした間接的なメールフローについては、p=rejectp=quarantine相当として扱うべきとされています。
自社ドメインの利用実態(転送の有無、メーリングリスト経由の送信の有無)を踏まえたうえで、最終的なポリシーを判断することが重要です。


v=DMARC1; p=reject; rua=mailto:rua@example.com; ruf=mailto:ruf@example.com; adkim=r; aspf=r;

ARC(Authenticated Received Chain)への対応

メール転送やメーリングリストを経由するメールでは、SPFやDKIMが壊れる場合があります。
Googleは、これらの間接的なメールについてはARCヘッダの付与を求めています。
ARCはRFC 8617で定義されており、転送経路での認証結果を保持する仕組みです。

6. DMARCbis ― 2026年5月のDMARC仕様刷新

2026年5月21日、IETF(Internet Engineering Task Force)は、2015年に公開されたRFC 7489に代わる新しいDMARC仕様として、RFC 9989RFC 9990RFC 9991の3本を正式に公開しました。
これらは総称して「DMARCbis」と呼ばれています。

最大の変化は、DMARCが従来のInformational(参考情報)扱いから、IETFのStandards Track(標準化過程)へと格上げされた点です。
これにより、DMARCは正式なインターネット標準としての位置付けを得ることになりました。

3本のRFCへの分割

RFC 9989
DMARCのコアプロトコル。ポリシー評価、アライメント規定、レコード処理を規定します。
RFC 9990
集計レポート(Aggregate Report)の仕様です。
RFC 9991
失敗レポート(Failure Report)の仕様です。

既存のDMARCレコードへの影響

v=DMARC1で始まる既存のDMARCレコードは、そのまま有効です。
DNSレコードを緊急に書き換える必要はありませんが、以下の変更点は把握しておく必要があります。

Organizational Domainの判定方式変更
従来のPublic Suffix List(PSL)参照から、DNS Tree Walkアルゴリズムに変更されました。
pctタグの廃止
テストモードの指定は、pct=に代わりt=yを使用します。
npタグの新設
存在しないサブドメイン向けのポリシーを個別に指定できるようになりました。
Full DMARC Participationの明文化
Section 8「Conformance Requirements for Full DMARC Participation」では、Domain OwnerがSPFアライメントとDKIMアライメントの双方を満たすメールを送ることをMUST(必須)と規定しています。ただし、これは「完全な参加」の基準であり、DMARCの合否判定自体はSection 4.5の通り引き続きOR条件です。

p=rejectに関するガイダンスの変更

DMARCbisでは、メール転送やメーリングリストを経由するトラフィックが多いドメインに対して、p=rejectを一律に適用することを推奨していません。
レシーバー側に対しても、そうした間接的なメールフローについてはp=rejectp=quarantine相当として扱うことが求められています。
自社の送信実態を踏まえたうえで、ポリシーの引き上げ方針を判断することが重要です。

DMARCbisの登場は、GmailやOutlook.comが求める「SPFとDKIM双方のアライメント」という実務上の要請を、標準仕様自体が正式に追認したことを意味します。
今後は、DMARCレコードの有無だけでなく、SPFとDKIMの双方のアライメントを満たしているかどうかが、メール到達性を左右する基準になります。

7. PowerDMARCでの対応確認

PowerDMARCのダッシュボードを活用することで、自社ドメインから送信されたメールのSPFアライメント状況、DKIMアライメント状況、そしてDMARC合否をリアルタイムで監視できます。

具体的には、以下の確認が可能です。

RUAレポートの分析
各送信元ごとに、SPF認証結果、DKIM認証結果、SPFアライメント、DKIMアライメントの状態を確認できます。「SPFは合格だがアライメント失敗」「DKIMは合格だがアライメント失敗」といったケースを特定し、修正対象の送信元を把握できます。
送信元ごとのアライメント状況
ESPやSaaSサービスなど、外部から送信されるメールについて、カスタムReturn-PathやカスタムDKIM署名が正しく設定されているかを確認できます。
アラート機能
アライメント失敗の急増や、新たな未認証送信元の検出時にアラートを受け取ることができます。

まとめ

DMARCの標準仕様ではSPFまたはDKIMのいずれか一方のアライメント合格で十分ですが、GmailやOutlook.comといった主要メールプロバイダは、SPFとDKIMの双方でのアライメント合格を求める方向へ進んでいます。
2026年5月に公開されたDMARCbis(RFC 9989/9990/9991)でも、Section 8「Full DMARC Participation」の要件として、SPFとDKIM双方のアライメントがMUST(必須)と明文化されました。
Googleは将来的にこれを必須要件とする可能性を示唆しており、Microsoftも「できれば双方(preferably both)」と推奨しています。

メールの到達率を維持し、なりすましメールから自社ブランドを守るためには、以下のアクションが必要です。

「どちらか一方で合格すれば良い」という時代は終わりつつあります。
今すぐ、すべての送信元でSPFとDKIMの双方のDMARCアライメントが合格しているか確認しましょう。