NISTサイバーセキュリティフレームワークを理解する ー総合的ガイドー
2024年9月1日
著者: Ahona Rudra
翻訳: 岩瀨 彩江
この記事はPowerDMARCのブログ記事 Understanding the NIST Cybersecurity Framework: A Comprehensive Guide の翻訳です。
Spelldataは、PowerDMARCの日本代理店です。
この記事は、PowerDMARCの許可を得て、翻訳しています。
サイバーセキュリティは、あらゆる組織のインフラストラクチャにおいて重要な要素として位置づけられます。
サイバー脅威の増加を踏まえると、これらのリスクに対抗するためには強固なフレームワークが不可欠です。
注目すべき解決策の一つが NIST サイバーセキュリティフレームワークです。
しかし、それは何であり、どのように組織に利益をもたらすのでしょうか。
重要なポイント
- NIST サイバーセキュリティフレームワークは、サイバーセキュリティリスクを管理し軽減するための、体系的で任意のアプローチを提供します。
- 5つの中核機能(識別・防御・検知・対応・復旧)を理解することで、組織のサイバーセキュリティ態勢を強化できます。
- NIST フレームワークを成功裏に導入するには、利害関係者間の効果的なコミュニケーションと協働が不可欠です。
- 定期的なリスク評価とギャップ分析は、組織がサイバーセキュリティの取り組みとリソースを効率的に優先順位付けするのに役立ちます。
- カスタマイズ性と拡張性により、NIST サイバーセキュリティフレームワークは、規模や業種を問わず、あらゆる組織に適しています。
NIST サイバーセキュリティフレームワークとは何か
NIST サイバーセキュリティフレームワークは、米国国立標準技術研究所(NIST)が定めたサイバーセキュリティに関するガイドラインの集合です。
このフレームワークは、組織がサイバーセキュリティリスクを扱う際に、任意で利用できるリスク重視の手法を提供することを目的として作成されました。
それは、さまざまな業種や規模の組織がサイバーリスクを理解し、管理し、軽減するのを支援することを目指しています。
NIST 監査チェックリストは、組織がフレームワークのガイドラインに効果的に準拠するのに役立ちます。
体系的なアプローチを提供することで、サイバーセキュリティ対策における一貫性と包括性を確保できます。
サイバー脅威が進化するのに伴い、フレームワークも更新され、常に関連性と実用性が保たれています。
この適応性により、NIST サイバーセキュリティフレームワークは、組織のサイバーセキュリティ態勢を強化するための価値あるツールとなっています。
NIST サイバーセキュリティフレームワークの中核要素
NIST CSF は、識別・防御・検知・対応・復旧という 5 つの中核機能を中心に構築されています。
これらの各機能は、包括的なサイバーセキュリティ態勢を確保する上で重要な役割を果たします。
それらは、リスクを管理し削減するための継続的な改善サイクルを形成します。
これらの機能を統合することで、組織は堅牢な防御戦略を構築できます。
- Identify
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Identify(識別)機能は、組織が自らの環境を理解し、システム、資産、データ、および能力に対するリスクを特定するのに役立ちます。
これは、システム、人員、資産、データ、能力に関するリスクを効果的に扱うために、組織としての明確な理解を確立することを含みます。 - Protect
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Protect(防御)機能は、潜在的なサイバーセキュリティインシデントの影響を制限または軽減する能力を促進します。
これは、重要なインフラサービスの提供を確保するために、適切な保護策を実施することを含みます。
この機能に含まれる対策には、アクセス制御、認識向上トレーニング、データ保護、保守などがあります。 - Detect
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Detect(検知)機能は、サイバーセキュリティイベントの発生を特定するための活動を定義します。
これは、イベントを迅速に発見できる活動を実装することを含みます。
継続的な監視と検知プロセスはこの段階で極めて重要であり、潜在的な脅威を素早く特定する助けになります。
効果的な検知により、組織は迅速に対応できます。
早期検知は被害を最小限に抑え、侵害の拡大を防ぐことができます。 - Respond
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Respond(対応)機能は、インシデントが検知された後に必要となる行動を含みます。
これは、特定されたインシデントに対応するために必要な手順を策定し、実行することを意味します。
この機能の主要な活動には、対応計画、コミュニケーション、分析、軽減、改善が含まれます。
適切に調整された対応は、サイバーインシデントの影響を大幅に軽減することができます。 - Recover
-
Recover(復旧)機能は、レジリエンス計画を維持し、このインシデントによって影響を受けた能力やサービスを復元するために必要な行動を決定します。
これは、インシデント後に組織が迅速に通常業務へ戻れるようにすることを目的としています。
復旧計画は定期的にテストし、更新する必要があります。
レジリエンスは、組織がサイバーインシデントに耐え、回復できることを保証します。
NIST サイバーセキュリティフレームワークを導入することによるメリット
- Improved Risk Management(リスク管理の向上)
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このフレームワークは、サイバーセキュリティリスクを特定・評価・制御するための体系的な方法を提供します。
これにより、組織はリスクに基づいて取り組みの優先順位を付けることができます。
最も重要な領域から優先的に対処することでリソースを効率的に活用でき、このターゲットを絞ったアプローチは全体的なセキュリティ態勢を強化します。 - Enhanced Communication(コミュニケーションの向上)
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フレームワークは、組織内および外部ステークホルダーとのコミュニケーションを改善します。
共通の言語と標準を使用することで、問題を議論し対応することが容易になります。
明確なコミュニケーションは、サイバーインシデントの発生時やその後の効果的な調整に不可欠です。
リスクと緩和策を理解していることで、ステークホルダーはより効果的に協働できます。 - Regulatory Compliance(規制遵守)
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NIST CSF は任意のフレームワークですが、多くの規制機関がこれを参照しています。
NIST フレームワークを導入することで、組織は多様な規制要件を満たすことができ、非遵守による罰則の可能性を軽減できます。
また、遵守は組織のサイバーセキュリティへの取り組みを示すものであり、顧客やパートナーとの信頼構築にもつながります。 - Flexible and Scalable(柔軟性と拡張性)
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このフレームワークは柔軟性があり、組織の要件に応じてカスタマイズできます。
中小企業から大企業まで、規模や業種に応じてスケーリングできる点が特徴です。
この適応性により、あらゆるセクターで利用可能です。
また、段階的に導入することもでき、無理のない持続的な採用が可能です。
NIST サイバーセキュリティフレームワーク導入のステップ
組織はどのようにこのフレームワークを導入できるのでしょうか。
以下が重要なステップです。
- 1. Prioritize and Scope(優先順位付けと範囲設定)
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事業/ミッションの目的と優先事項を特定します。
重要なサービスやシステム、そしてサイバーセキュリティリスクがこれらの目的に与える影響を理解します。
このステップが実装プロセスの方向性を定めます。
優先順位を付けることで、最も重要な領域にまず注意を向けることができます。 - 2. Orient(現状把握)
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関連するシステム、資産、規制要件、および全体的なリスクアプローチを特定します。
このステップでは、現在のサイバーセキュリティ態勢を理解することが求められます。
ベースラインを把握することで、進捗を測定しやすくなります。
また、ギャップや改善が必要な領域の特定にも役立ちます。 - 3. Create a Current Profile(現状プロファイルの作成)
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組織の現在の活動を反映したプロファイルを作成します。
これにより、出発点を明確にし、改善すべき領域を把握できます。
現状プロファイルは今後の評価における基準となります。
既存のセキュリティ状況を明確に示すものとなります。 - 4. Conduct a Risk Assessment(リスク評価の実施)
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運用環境を分析し、サイバーセキュリティイベントが発生する可能性と、その組織への影響を判断します。
このステップにより、直ちに対処すべき領域の優先順位付けが可能になります。
リスク評価は定期的かつ継続的に実施する必要があります。
これにより、新たな脅威や脆弱性に対応することができます。 - 5. Create a Target Profile(目標プロファイルの作成)
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望ましいサイバーセキュリティ成果を示す目標プロファイルを作成します。
目標プロファイルは、セキュリティ改善に向けた目標を設定し、現状から望ましい状態へ移行するためのロードマップとして機能します。 - 6. Determine, Analyze, and Prioritize Gaps(ギャップの特定・分析・優先順位付け)
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現状プロファイルと目標プロファイルの間に存在するギャップを特定します。
これらのギャップを、リスクおよび対応に利用できるリソースに基づいて優先順位付けします。
ギャップへの対応はセキュリティ向上のために重要であり、優先順位付けはリソースを効率的に配分するのに役立ちます。 - 7. Implement Action Plan(アクションプランの実行)
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ギャップを解消するためのアクションプランを策定し、実行します。
これには、NIST CSF の中核機能やカテゴリを適用して組織のサイバーセキュリティを強化することが含まれます。
アクションプランは動的で適応可能である必要があります。
定期的なレビューと更新により、継続的な適合性と有効性が確保されます。
まとめ
NIST フレームワークは、サイバーセキュリティリスクを管理するための包括的・柔軟・拡張性のあるアプローチを提供します。
中核機能を理解し実装することで、組織は自身の機能を強化し、サイバー脅威に対するレジリエンスを確保できます。
NIST 監査チェックリストを作成することで、フレームワークへの準拠状況を確認し、改善が必要な領域を特定することができます。
このフレームワークを採用することは、セキュリティとリスク管理への強いコミットメントを示すものです。